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一人でいる力

駆け出しの頃、スクールカウンセラーが学校内で発行するカウンセラー便りに書いた記事です。

一人でいる力

「どんなに頑張っても友達ができないんです」

時折、このような趣旨の相談が寄せられる。話を聞いていくと、その人は友達を作るためにとても頑張っている。

相手に好かれるために、いろいろと配慮したり気を遣ったり、あまり興味のない話題にも話を合わせてみたり。とても頑張っている。

でも、「どうしても、友達と呼べる関係にはなっていない気がする」という。

「何か表面的な付き合いに感じてきて落ち着かない。疲れてしまうんです」と。  

人間関係には「友達を作る力」のほかにも「一人でいる力」というのもある。 

友達ができないと訴える人の中には「友達を作る力」がすべてと思い込んでいる人が多い。それに長けた人もいるが、一人でいるのに長けた人もいる。

「一人でいる力」があると、流されにくかったり、物事のウソやホントに敏感になれたり、いろいろとメリットもあるだろう。

そんな力もあると考えてみることで、今の自分が少し違って見えてくるのではないだろうか。

この記事を出したのは、ある中学校でしたが、ずいぶん経ってから、私の書いたことに「気持ちが救われました」と伝えてくれた生徒さんがいました。

学校や社会全体に「みんな仲良く」の同調圧力がかなり強いと感じ、そこに息苦しさを抱える生徒さんもいるように見受けられ、書いてみたのを覚えています。

友だちは確かに良いものです。でも、中学校の間に無理をして作らないといけないものではありません。

たまたまメンバーに、自分と気が合う人がいないことなど、いくらでもあります。

あれから10年以上経って、社会の状況や学校の状況も少しずつ変わってきました。震災があり、様々な事件があり、コロナ禍がありました。

学びや仕事の形態も変化し、かつてほど、今は「みんな仲良く」の圧力はないかもしれません。

しかし「一人でいること」に対する許容度は広がったにせよ、ポジティブな評価はまだまだされにくいかもしれません。

「ボッチだから」、「陰キャだから」・・・こんな言葉で自称して、自分を価値下げしている生徒さんも多いです。

みんな仲良く明るく過ごしている陽キャの人たちが、必ずしも、仲良くできているのか、心から楽しんでいるのかは分かりません。

お互いを尊重し合えて、お互いを高めあえているのかはわかりません。仲良くしている風なだけという集団もあるでしょう。

一人でいることも立派な能力だと思います。

そして一人でいられる力がある個人が連帯していくことが大切だと思います。

世界を見渡すと、個の力がなければ、人々と十分にコミュニケーションも取れないし、つながっていくことは難しいのは明白です。

お友達ごっこで、日本では通用しても、世界ではまったく役に立ちません。

一人でいる力を持つ人が、日本特有の同調圧力によって芽を摘まれてしまうのはもったいないように思います。

一人でいる力をつけ、伸ばしていくことに、カウンセリングがお役に立てたらいいなあと思っています。

じっくりと自分を見つめていく個人心理カウンセリングは、まさに一人でいられる力をつけていくのにも、うってつけのように思います。

この業界では「個人心理療法の時代は終わった」とか、公認心理師が誕生し「連携の時代」とか言われています。今後も個人カウンセリングは日本では流行らないとも思います。

それでも、それがあると知り、チャンスがあれば利用してみたいという方は一定数いらっしゃると思っています。

一人でいる力をしっかりつけたい。

わざわざお金と時間をかけてでも、自分をしっかりさせたい。人に流されず、同調圧力にも左右されず、自分を持ちたい。

そのような方に見つけ出していただけたら嬉しく思い、今日も細々と営業を続けていきます。


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