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【企画参加 #才の祭小説】 2人の愛の物語~クリスマスイヴ

「どんなに正しいことだとしても相手に突きつけちゃダメだよ」 

今まで、俺にそんなこと言うやついなかったよ

あなたと初めて会ったのは入社後の研修の時だった。 
何もわからない新入社員の俺達のお世話係みたいなものだった。 

俺は今でも、わからない事があるとあなたに聞きに行く。 

「それ、私の担当じゃないよ」と笑いながらも教えてくれる。 

あなたは何でも知っていてとても心強いんだ。



俺は頑張って仕事を覚えた。 

早く1人前の社員と言われたかった。

わからない事は上司にも聞いた。 

おかしいと思った事はおかしいと言った。

話す事に自信がある。

口論も多かったが、最後には相手は納得してくれている、そう思っていた。 


俺はあなたを誘い食事に行くようになった。

あなたに得意気に話した。
『俺が話せば、みんなちゃんとわかってくれてるんだ』と。 

そんな俺を見ていてあなたは「そうじゃない」と言った。

「どんなに正しい事だとしても、相手に突きつけちゃダメだよ」 
あなたのいつもの台詞だ。 

『どうしてですか!意味が分からない』つい声が大きくなった。 

「言い返せない人は黙って離れていくのよ」とあなたは言う。 

『俺は大丈夫ですよ、そんな事わかってますから』 

あなたは優しく微笑んだだけだった。 

あなたが俺の何をそんなに心配しているのかわからなかった。 


ある時、先輩の仕事のやり方に納得がいかず聞いた。 

先輩の答えがどうしても理解できず、俺の考えを伝えた。 

伝えたと言うものの、相手に有無を言わせぬ言い方だったと思う。

だって俺は間違っていない。 

先輩は「わかったよ」と言うと席に戻った。 

それから、まわりの雰囲気が変わっていったんだ。 

先輩や上司と以前のように雑談をする事が減った。 

フロアーの空気が、俺のまわりだけ重くなっていたような気がする。

同期から「ほどほどにしとけよ」と言われた。

間違っていないのに、どうしてだ。 



そんな時、あなたはいつものように言った。 

「どんなに正しいことだとしても突きつけちゃダメなんだよ。相手も人間だからね。受け入れてもらえる程度にしなきゃね」 

その時、きっと俺はしかめっ面であなたを睨んでいただろう。

正しい事を正しいと言って何がいけないのだ。

世の中、白か黒だ。

しかし、そんな事を繰り返しながらも、俺は少しずつ学習した。仕方なくではあったけれど。

「カッとしたら10数えてから話しなさいね」

これもあなたからの教えだ。

「普通の人は3くらいで良いけど、君は着火が早いから10くらい必要だよ」と笑いながら話すけど、もうワケわかんないよ。

でも、それを守って(時々、数えるの早いけど) 今は少し穏やかになりつつある。

あなたの言うとおりだった。

まわりの空気が少しずつ変わっていった。


あなたには感謝している。

こんな俺を見捨てないでいてくれてありがとう。



今夜はクリスマスイヴ

街は煌めいている。

食事の後、イルミネーションを見ていたあなたの左手をその煌めきにかざして言った。

『明日、この薬指につける指輪を一緒に買いに行こう』



PJさんの#才の祭小説 に参加いたします。


枯れ木も山の賑わいです。

素敵な企画をありがとうございます✨

どうぞ、ご笑納くださいませ☘️


この2人、この先どうなるんでしょうね😊

読んでくださってありがとうございます❤️

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