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パナマ帽 002/映像脚本

○線路沿いの道
   真紀と友紀が歩いている後ろ姿。
   と、水野美紀(32)が道の向こうから歩いて来る。
   真紀と友紀が美紀に気づき、声を掛ける。
真紀「ミノリ」
友紀「どこ行くんだよ?」
美紀「(二人に気づき)あら、久しぶりね」
   三人、その場に止まる。
友紀「家に帰るのか?」
美紀「ええ。(真紀を見て)ていうか、なにその帽子?」
友紀「カッコいいだろ?」
美紀「う~ん、微妙ねぇ」
友紀「真紀がAmazonで買ったんだよ」
美紀「なんで?」
真紀「ジュリー、知ってるか?」
美紀「白髪白髭のカーネル・サンダース?」
真紀「トモキも同じこと言った」
美紀「今はあんな太っちょさんだけど、昔はカッコよかったていうか、色っ
 ぽかったよねぇ!」
友紀「知ってるのか?」
美紀「YouTubeで発見した」
真紀「俺もだよ。そっからはまった」
美紀「それで、そのパナマ帽なのね」
真紀「その通り!」
   友紀が真紀にパナマ帽を被せる。
友紀「これを被って、マサキがジュリーを歌ってくれるっていうから、カラ
 オケに行くところなんだ」
真紀「ミノリもいっしょにどう?」
美紀「あ、いいね! 私もジュリーを歌いたい」
真紀「よし、行こう!」
友紀「行こう! 行こう!」
   三人、カラオケ店に向かって歩き出す。

○カラオケ店・内
   真紀、友紀、美紀が、ソーシャルディスタンスを取り、座っている。
   ドアを叩く音―店員がビールを持って入って来て、ビールを置き、部
   屋を出て行く。
   三人、ビールを持つ。
真紀「では、ジュリーに乾杯!」
友紀&美紀「乾杯!」
   三人、ジョッキを合わせ、一口飲む。
美紀「(その一口で酔いが回る)じゃあ、最初はマサキが歌ってよ」
友紀「(リモコンを持ち)何を歌う?」
真紀「この帽子だぜ。もちろん、カサブランカ・ダンディ」
美紀「あ、それ好き!」
   友紀が曲を入れる。
   ブラックアウト。

○マッチを擦る音
   パッと火が灯る。
   音楽1『カサブランカ・ダンディ/https://youtu.be/gvI_7tAlsGc』
   イン。

○クロマキー合成
   映画『カサブランカ』の中で歌う真紀(少し音痴)。
友紀「(声)マサキ、マッチを持ってたのか?」
   真紀、歌いながらマッチを見せる。
美紀「(声)なに、マッチって」
友紀「(声)後で話すよ」
美紀「ダメ~! 今教えて!」
友紀「あッ!」
   音楽1、アウト。

○カラオケ店・部屋・内
   真紀、友紀、美紀がソーシャルディスタンスを取り、座っている。
友紀「(ミノリに)ダメだよ、否定的なことを言っちゃ!」
美紀「何故? どうして?」
友紀「マサキが不思議なマッチを大量に持っていて、でも、それはもう捨て
 ちゃったんだけど…」
美紀「なにそれ? わかるように話してよ」
真紀「オヤジから、大量のマッチをもらってサ」
美紀「うん」
真紀「その中の一つを、そこに行きたいって念じながら取ると、そこに行け
 るんだよ」
美紀「えーッ、面白そう! やってみてよ」
友紀「だから、さっきも言ったけど、マサキが全部捨てちゃったんだよ」
美紀「ウソ!?」
真紀「ホント」
美紀「えーッ、見たい、見たい、見た~い! やってよォ!」
真紀「ゴメン。さっきのが、ホントにホントの最後だったんだ」
美紀「えーッ! なんだかものすごい喪失感というか、虚無感というか…」
友紀「それ、さっきオレも言った」
美紀「だって、もうマッチがないんだよねぇ…」
真紀「ああ」
美紀「なんで捨てちゃったのよ!?」
真紀「みんながいないときも一人でやってて、恐くなっちゃったんだよ。悪
 いな」
美紀「ワタシはセミの抜け殻かよ!」
友紀「オレも、さっき自分で突っ込んだ」
美紀「あ~あ~。(ソファーに突っ伏す)」
真紀「そう落ち込まずに、今度はミノリがジュリーを歌ってくれよ」
美紀「(勢いよく身体を起こし)歌う! ワタシ、歌う!」
友紀「立ち直りがはえ~なぁ…」
真紀「さっきのトモキもな」
友紀「は~い」
美紀「(立ちながらマサキに)その帽子を貸して」
真紀「ああ。(帽子を渡す)」
友紀「(リモコンを持ち)何を歌う?」
美紀「もちろん、♪勝手にしやがれ」
友紀「なるほど。って、その歌知らないけど。(曲を入れる)」
   音楽2『勝手にしやがれ/https://youtu.be/8ZZ1OLytpzs』イン。
   モニター画面にジュリーの本人映像が出る。
   美紀がその前で歌う―酔っているが、かなり上手い。

○クロマキー合成
   ジュリーの本人映像の中で、美紀、真紀、友紀が歌っている―歌声は
   ジュリー本人。



                               (終)

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