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[落語] 一種のドキュメンタリーな配信:露の新幸さん

昨日、落語家の配信について書いた際に思い出して、ぜひ書き残したいと思ったのが、露の新幸さんの配信である。

この方は、バーの経営をしながら落語家・露の新治師匠に弟子入り。つまりだいぶ年齢を経てからの入門である。
東京でいえば三遊亭兼好師匠みたいな形であろうか。

初回の緊急事態宣言の時にはご自身の経営されるバーから、音楽ライブや、ご自身や上方落語仲間との高座を配信されていた。
またご自身も「おしゃべり中毒」と仰るように、一晩中、話をするのも苦ではない方だそうで、高座の後のおしゃべりが3時間以上ということもざらにあり。
私もちょうどそのあたりに、何回か見るようになった。

だが当初の予想を超えて、コロナの影響が留まることを知らず長引き始めた頃、バーを閉店されることを決断された。

その一連の流れは、詳しくは新幸さんのアーカイブ動画で確認いただければと思うが、簡単に記すと。
・バーの店員(バイト)が感染したこと
・給付金等の件で政策金融公庫、濃厚接触の判断の件で保健所の方と、対応に追われたこと
・周辺の店舗、商店街の状況の激変ぶり等々…

他にも仰っていたように思うが、私の記憶にある分だけ書き出した。

決断されてからは、バーを片付けながら、高座をしたり、チャットの視聴者とおしゃべりをしたり。
そのチャットには上方の落語家仲間も書き込まれ、新幸さんを通して皆で会話をしているかのような、非常にアットホームな空気だった。

特に、バーの最終日には、ただただ片付けているだけの姿を映されていた。
それが深夜帯ということもあって、まるで地上波TVの長編ドキュメンタリーにも思うような映像であった。

ただ淡々と片付けられているだけなのだが、それまでに語られていたバーの思い出話や、来店された視聴者のチャットへの書き込みなども相まって、語らずして諭すという映像になっている。

また、そのチャットには上方の師匠達も度々書き込まれているのだが…。
笑福亭鶴志師匠もよく書き込まれていた。
そう、2020年5月に世を去られる直前まで、普通に新幸さんの動画配信のチャット欄で、他の師匠達とわちゃわちゃと言葉を交わされていたのだ。

奇しくも、いろいろな意味で、「儚さ」ということを感じさせられた。

落語の明るさを陽、それを求めるコロナ禍の庶民のあるがままを陰とするならば、その陰と陽を同時に見せていただいた配信だった。

最近は3~5分の散歩動画をUPされているようだが、またいつか、落語だけでなく、視聴者も加わってのおしゃべり中毒な配信が見れればと思う。

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