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フォカッチャ、おかわりで

谷中の商店街に、お店を借りる夢を見た。
商店街の終わりに近い、10坪ほどの、埃まみれの何もない部屋。
何をしても良いですよ、と目の前に突き出されたその部屋の前で、呆然と立ち尽くした所で目が覚めたら5時だった。

昨日、久しぶりに夕方の谷中を歩いたせいだと思う。
行こうとしていた、新築の立ち飲みは土日祝だけの営業に変わっていて、ガラス張りで真っ暗な店内が、異様な怖さを抱えて見えた。
10月末で閉店すると聞いたはずの角打ちはまだやっていて、10人ほどの様々な年齢が集まり、『延長の延長で3月末に閉めるってよ』という嬉しそうな声と缶で盛り上がっていたけれど、もう、壁にピッタリ据えられた陳列用冷蔵庫も、ビールサーバーもない、がらんどうな店を目の当たりにして、なかなか心に刺さるものがあった。

開店する店があり、閉店する店がある。

もちろん当たり前の時の流れだ。
売上げや、景気や、コロナの影響だけではないし、どんなに暇そうな店でも、なぜか細々と続いていく事もあるし、どんなに儲かっていても、どんなに素敵な店でも、諸事情で続けられない事もある。

『12月に入ると、閉店するお店が続々と出てくるでしょうね。』

昨日、一緒にいた飲食店の社長がしみじみと呟くように言っていた。
わかりきっている事でも、耳から聞こえると、怪談みたいに寒気がした。
開店して一ヶ月の立ち飲みで、ばかすか(フォカッチャ8切れとか)ご馳走になって、一枚も写真を撮らなかった。

今日の夢が怖くて怖くてたまらなかったのは、きっと、もう動かなきゃいけない現実が近づいているからなんだろう。
雇われて、出来ないながらも働いて、お給金を頂いて、休みはぼんやりと腰を労る日々はもう、とっくに終わってる。

そういえば昨日、無添加生餃子の無人販売所のオープンで人手を欲しがる人に、餃子のやーまんを紹介した。
餃子のやーまんについてはこちら

やーまんは餃子なので、バイトやお金になんて1ミクロも興味はない。彼女にあるのは、自分が死ぬまでに自分自身の納得いく餃子を作りたい、という生き方だけ。

これから、無人販売所の前で餃子の被り物をして餃子を売る彼女は、町ゆく人には【バイトで餃子を被らされている哀れな女の子】に見えるだろうが、そんな事は餃子の前ではどうでも良い事だし、なんなら被り物は彼女の私物で、宝物だ。

餃子屋さんで販売のお手伝いをして、餃子について教えてもらう。
最高じゃないか。
我ながら、良い仕事をした。

冒頭の夢の話に戻すと、明るく、New OPEN!カミングスーン!なんて言えるのは、自信に満ち溢れたクラスど真ん中の陽キャか、怖過ぎて何も考えられなくなった人だと思う。

最悪失うのはお金くらいだし、とは思っても、首を括るほどの借金は夫に迷惑がかかるし、お金儲けの話は銀座時代からずーっと周りの大人が話しているからうんざりしているし。

飽きっぽくガサツで、あまり料理の向いている性格でもないと、板前の父を見ては、我ながら思う。でも仕方ない、料理は面白すぎるし、食べてくれる人が好きだから。

いっちょやるか、と重い腰を上げるまで、もう少し、現実と悪夢を見ようと思うので、イベントなど含め、お付き合い頂ければ幸いです。

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