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詩のようなSS【空】#シロクマ文芸部

お題「消えた鍵」

【空】

消えた鍵をポケットに入れて家を出た。
消えた鍵がどうしてポケットに入るのかって?
『ここに鍵がない』がポケットにあるのさ。
だから『消えた鍵』はここにあるんだ。
オーケー?

とにかくボクは家を出た。
両手をポケットに突っ込んで。
そう、荷物なんか持ってないよ。
強いて言えば『荷物がない』を持っている。
フフ。

とてもいい気分さ。
ボクは口笛を吹きながら歩いていく。
黒猫が前を横切る。
それは幸運の印。
ラッキー!

逆じゃないか、って?
誰がそんなこと言ったんだい。
ボクは自分の好きに決めるよ。
ボクの人生なんだから。
アタリマエでしょ。

ボクは黒猫についてった。
かわいい奴だったからね。
着いた所は町はずれの古い倉庫。
赤いドアの前で黒猫が止まる。
カリカリ。

閉まっているドアを開けてやろう。
入りたそうにドアを引っ掻いているからね。
ボクはポケットから『消えた鍵』を出してドアを開けた。
言いたいことはわかるよ、ハハハ。
ガチャリ。

ドアを開けると『ここに鍵がある』が床の上にあった。
言いたいことはわかるよ、フフフ。
ボクはそれを拾ってポケットに入れた。
さあてと、見つかっちゃったからボクは家に帰ろう。
さよーニャら。

黒猫はしらんぷりして毛づくろいをしている。
ボクはもう片方のポケットに『ここに猫がいない』を入れた。
もうすぐ『ここに太陽がない』夜がくる。
夜空だって空だけどね。
クゥ。お腹が空いた。


おわり

(2023/7/16 作)

小牧幸助さんの『シロクマ文芸部』イベントに参加させていただきました。
『空(くぅ)』って、なんじゃろ~(*´ω`*)
言いたいことはわかります。ホホホ。


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