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嘘の素肌

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「何者でもない僕に付加価値を与えてくれるのは、いつだって好奇心旺盛な女性達でした。」 桧山茉莉、二十七歳。仕事や人間関係に不自由なく生きてきた"何者でもない男"を取り囲むのは、…
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嘘の素肌「第11話」

嘘の素肌「第11話」

 今年度は新卒採用で春から会社に十名の新人が入社した。三、四年目の社員が一人につき二名を抱える形で研修上がりの新入社員を最低半年は教育するのだが、今年僕は新人教育から外れ、新設されたプラットフォーム事業部のSEOリーダーとして抜擢された。昨年に僕が中心となって取り組んだメディアディレクション業が追い風となったのだろう。自己評価と他者評価の差異に気後れしながらも、会社の新たな剣として身を粉にして働く

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嘘の素肌「第25話」

嘘の素肌「第25話」

 玄関に上がると廊下の電気が付いていた。念の為足音をわざと荒立てつつリビングに踏み入ると、ソファに腰を下ろしながら足の爪にネイルを塗っていた片山いずみが「おかえりなさい」と静かな声で振り返った。赤紫色のペディキュア。シャネルのヴェルニが、硝子仕様のローテーブル上に鎮座していた。

「ただいま。今夜は夜更かしだね」

「茉莉が帰ってくるの待ってたんだよ」

 ブラトップにハーフパンツ姿という警戒心の

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