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アルバムへの言葉(3):ゆ〜すほすてる/引っ越ししたい


アルバムへの言葉?

「アルバムレビュー」という言葉がある。
レビューは、評論や批評を指す言葉であり、自分には少し「重く」感じられた。ただ、「感想」と表現するとそれはそれで少し「軽い」、そしてどこか他人事に感じられた。
今の所妥当な表現が見つかっていないので、ミュージシャンが全力160KMで投げてくれたアルバムという作品に対しての言葉、というまとめ方にしておきたい。テトリスが綺麗に消えるときのように、すっぽり収まる表現が見つかるまで。

引っ越ししたいへの言葉

ずっとどうしようもないことを歌っている

京都のインディポップバンド、ゆ〜すほすてるの2023年アルバム。
基本的に、新譜のみをレビューしていこうと思っていたのだが、書きたくなって筆をとってみた。

彼らはずっとどうしようもないことを歌っている。

なんだってできるような気がしていた時期もあったけど
何一つできることがないことを今は知っている(かなしい)
最近体調悪い やばいくらい無意味な週末(犬)
好きでこんな風になっているわけじゃない(みんなあっと驚く死に方)
こないだ青春は終わったんだ(夏休みが始まらない)

ただ、ゆ〜すほすてる、彼ら彼女たちの音楽は、逃避的ではないと思う
郊外や、エセシティポップやリバーブに逃げ込むのではなく、京都という古都の中で、あえて自分を曝け出して、泥酔酩酊吐露放浪しながら生きている。少しずつ部屋から飛び出して、屈折をオープンに軽やかに表現している。

音楽的には、インディポップネオアコをベースにしながら、PavementやダイナソーJrno様なグランジUSオルタナティブなギター、またOnly RealのようなベッドポップSSWの要素を混ぜ合わせつつ、Wボーカルでギリギリの軽やかさを表現している。

ダサかっこいい

そう彼らは、ダサかっこいいのである。
「かっこよくない」し、音楽的にすごい訳じゃないかも知れないけれど、「めちゃくちゃええ音楽」を爆発させるバンド。

僕には昔からサボり癖がある。 生きていく中で感じる様々な軋轢に耐えられなくなると、「社会」から離れて誰もいない場所で閉ざされたくなる。
学校をサボって雨が降る公園で本を読んだり、学校に行けずに駅前でpeople in the boxの2chまとめを読んだり、仕事に行けずに狭い部屋で布団に包まったり… 決して良いことではなく、どうしようもなくそこに追い込まれる…でもそこには居たくない!このままじゃいたくない!…でも、今はこうしてるしかない…。 そんな、プチ・ミニ・アマチュア逃避行。 あえて逃避行をすることで社会という平均台の上にギリギリ立っていられる

ゆ〜すほすてるの音楽は、布団や街に逃げる時に、世界が少し美しく見える気がする。かなしいしダメな気持ちの時も、世界が美しく見える気がする。何故ならダサかっこよくて、優しいからだ。

ちなみに2022年の冬、私の友人は「夏休みがはじまらない」を聴いて号泣。そして、今私は「犬」を聴きながら、近所のデカい公園で過ぎていく犬を見つめる。日々の糧。 そんなバンド、ゆ〜すほすてる。

君に響く音楽なのかは分からんけど、 闇に逃げる前に聴いてくれ!

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