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レシピのない料理教室

この春から、月に1回精進料理を作る会を開催して胡麻豆腐を作っているのだけれど、毎回出来上がりが違うのがとてもおもしろい。決まったレシピで作るのだから同じ味、同じような食感、同じような色や見た目でできなければいけないのかもしれない。ただこのレシピは特別。胡麻と水と葛だけでできているのだ。いかに胡麻が擦れているかが味の決め手で、いかに葛が練れているかが食感の決め手。同じものを使っていても、その日の気候、作り手によって様々な出来上がりになるところが料理らしさを感じられて楽しい。

徳島県の神山町にあるゲストハウス「神山くらしの宿mojahouse」の、「moja/もじゃ」はベンガル語で「おいしい、楽しい」という意味。おいしい楽しいが体験できるmojahouseでは、「和気藹々と残さずいただく」ということを重んじている「普茶料理」のスタイルで精進料理の会を行なっている。
中国式精進料理と言われている普茶料理は江戸時代に中国から伝わった黄檗宗の精進料理で、普く(あまねく)大衆と茶を共にするという意味であることから、身分平等に1つのテーブルに上下関係なく座って大皿に盛られた料理を分け合うスタイル。もどき料理も普茶料理の特徴である。
毎回胡麻豆腐はやることにして、他のメニューはその日に集まった神山の野菜で作るものを決めている。レシピを用意していないというとんでもない料理教室。何を作ろうか1週間前にレシピを決めておいても、欲しいときにはなかったり、おいしい時期がちがったりする。産直市に並ぶ野菜は毎日違うのだ。
それに神山町では畑をやってるお家がたくさんあるから、誰かに野菜をもらって家に帰ったら玄関にもまた違う誰かから野菜!なんてことがしょっちゅうある。大量にもらった野菜はいつもどんな風に使ったらいいかわからなくて、同じパターンで使ってしまいがちというオーナーの悩みから、まずは精進料理ではどう使うかやるのと、あとはみんなはいつもどうやってるか聞いてみたいね!なんて他力本願な考えで、レシピを決めていない。

意外と他人がどんなものを作っているか知らないもので、集まった野菜を囲んで何を作ろうか話ししてるときに、うちの故郷ではこうやってるよー、えー!それ作ってみたいと思ってたんだー!なんて話になったりして盛り上がる。
精進料理というと、厳しい決まりを覚えたり手間のかかることをするイメージがあるかもしれないけど、ここでの調理の時間は作りながらおいしそうだねーきれいな色だねーなんて言ったり、こういう場合はどうしてる?とか気になったことを聞いたりして、和気藹々としている。精進料理を知っていてもいなくても、菜食主義でもそうじゃなくても、普段から料理していてもいなくても、ただただここではこれから自分たちの食べるものについて話してる(胡麻豆腐をつくるとき集中していて無言な時間もあったり)。
料理ってめんどくさいものと言われるし、すばらしいものとも言われるし、わたしもどっちも思う。毎日まいにち頑張れないけど、mojahouseみたいな景色のすてきな場所に行ってみるとなんかやってみようかなという気持ちになれたり、旬の野菜の食べ方を知っておくと、「だいじょうぶ、わたし、いざとなったらできるし」って思えて普段のダメな自分も許される気がしてる。

料理を覚えるというよりも、料理を楽しんでおいしいもの食べる、という感覚できてもらえたらと思う。レシピがない分なんとなくのやり方を覚えて帰ってくれてて、「あれ、うちでもやってみたんだ」と言ってもらえるのはさいこうにうれしい。

読んでくださってありがとうございます。精進料理がきっかけで移住したと言えるくらい精進料理の世界にはまっていますが、食べるものはなんでも好きです!四国は野菜に果物、お魚などおいしいものがたくさんあるので、食べものに使わせていただきたいと思っています。レポートします!