見出し画像

【学習障害と少年院】実は“隠れLD”が多いのではないかというお話

・ある少年院に収監されている少年のうち60.7%LDとわかった
・しかし、学校では小2を境にどんどんLDの人数は減っている
・そして、中3になると小1の1/5まで減少
・でも、他の発達障害はそこまで減っていない

私の現在「学習指導専門員」という職名で、発達障害があるなしにかかわらず(でも95%はそうなんですが)、うちの事業所に来た子どもたちに勉強を教える仕事をしています。

そこで感じるのが、
「LDって本当は水面下にめちゃくちゃ人数いるんじゃない?」
という現場感覚。

文科省はLDは4.5%と発表していますが、果たしてその数値が正しいものなのかを考えていきます。

【本当はもっとLDが多いのでは?】

2012年に文科省は通常級にいる発達障害の子どもたちを調査し発表しました。

■ 知的発達に遅れはないが学習面又は行動面で著しい困難を示す子の割合

画像1

(参考:文科省「『通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査』調査結果」)

つまり、発達障害児6.5%学習障害児(LD)が4.5%ということです。

また、この調査では学年別の割合も出しています↓

画像2

画像3

(参考:文科省「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について」)

お気づきの点、ありますか?

そう! 小1を境に学習障害児の減少割合が飛び抜けて高く、中学校にあがるとそれが顕著なんです。これは何を意味するのか。

ポイントは、この数値を報告しているのは担任教員というところです。

確かに減少した理由として、通常級から支援級への学籍変更が考えられますが、それなら他の発達障害児の数値ももっと下がるはずです。

なぜ学習に困難を抱えている子だけ数値が下がっているのか。

私が思うに、

学校来てないんじゃない?
不登校になってるから、わからないんじゃない?
先生から見えないから見逃されてるんじゃない?

という推論です。

文科省の調査では、不登校の理由が「学業不振」となっているのは、7.2%です。

公立小中

ですが、日本財団が2018年、不登校の児童生徒本人を調査したところ、不登校(1年間で30日以上欠席)の理由の約半分49.9%)が「授業がよくわからない・ついていけない」と答えているのです。↓

日本

(参考:日本財団「日本財団 不登校傾向にある子どもの実態調査」2018)

学校の数値では低かった「学業不振」が、日本財団の調査では約半数になっている。

先生が考えている不登校理由と、本人が感じている不登校理由が異なっているのです。ここに「隠れLD」が潜んでいるのではないかと考えます。

また、先ほどの文科省の調査は、平成24年の2月~3月に集計されたものです。この時期は「ゆとり教育」の最後の年で、不登校者数が近年最も下がった時期でもあります(この件に関してはまた別記事にする予定です)。

つまり、ゆとり教育が終わり学習量が増えた今日、LD児の数はさらに増加している可能性が高いのです。

【なぜ“隠れLD”が発生するのか】

以前、「小1・小3・小5の学習の壁」について記事にしました↓

小1・小3・小5はグンッと学習のレベルが上がる学年です。そこでついていけなくなった子どもたちが不登校になっているため、この数値にカウントされていないのではないかという見解です。

実際、私が学習指導しているLDの子どもたちの多くは小2~3あたりで学習が止まっており(小1ないし小3の壁にぶつかっている)、それ以来学校に行っていないという子もたくさんいます。

私と出会ってきた子どもたちも、不登校のため先生との関わりが薄く、学校からはLDとは認識されていなかったパターンがほとんどです。

学習が出来ないのに45分や50分、じっと椅子に座っているのは拷問です。本読みを当てられて読めずに怒られて、漢字テストをして書けずに怒られて、計算問題をして間違えて叱られて。

LDにとって学校生活は苦痛以外の何ものでもないのです。出来ないことを隠し、隠しきれなくなったら恥ずかしい、苦しい、つらいと感じ学校に行かなくなる。

これが「隠れLD」です。水面下にたくさんいると感じています。

【“隠れLD”は非行に走りやすい?】

LDの非行に関して、以下の研究結果が出ています。

下のグラフは、ある少年院に収監されている少年たちの発達障害者率です。↓

画像4

「少年院における発達障害スクリーニングテストの結果」
(参考文献:『少年院におけるLD, AD/HDスクリーニングテストと逆境的小児期体験(児童虐待を含む)に関する調査』2007、松浦直己、橋本俊顕、十一元三)

合計549人中、LDは333人(60.7%)、ADHDは451人(82.1%)、その2つを併存している人は308人(56.1%)でした。

ASD(自閉スペクトラム症)は数値に表れていません。ASDは生真面目な性質が多く、犯罪を起こすことは少ないと言われています。

少年法であれば鑑別所程度の犯罪をすることはあっても、少年院程度の犯罪を起こすことはあまりないとされています。(ただし、ADHD併発の人も多いので、その場合は別です)

ADHDは衝動性が高く、快楽や欲望に弱い気質があるので、この数値は理解できます。

が、意外だったのがLD(学習障害)です。学習が出来ないことが、社会でのドロップアウトにも関係していることがわかったのです。

【LDを支援する2つの意義】

先ほどの研究結果は、不登校のためにLDであることが担任や他者に気付かれず、そのため適切な支援を受けられずに思春期になったLD児が、犯罪を起こしてしまったと考えられる内容でした。

そのため、LDに対する支援=学習支援が重要になりますが、ただ単に勉強を教えて成績を上げることだけが目的ではなく、2つの意義があります。

①学習の遅れをカバーをすることで自己肯定感の回復させる
将来の可能性を広げる
貧困の回避、就労につなげる、仕事の定着率をあげることにより犯罪回避

二次障害の予防
・不登校、うつ、ひきこもりの予防
・反抗挑戦性症、素行症の予防

子どもたちの課題にいち早く気づき、適切な指導・支援を入れることが重要です。

【“隠れLD”の生きづらさとは】

これまでたくさんのLD児をみてきましたが、その多くが

・さぼっている
・なまけている
・やる気がない
・楽をしようとしている
・努力が足りない

と周囲の人から評価されており、本来の支援が届いていないところに問題がありました。

LDは、それだけ見落とされがちな発達障害なのだと思います。

なので、私も含め、周囲の大人たちはよく子どもたちをよく観察し、適切な学習環境、支援をしていくことで、未来の犯罪を未然に防ぐことが出来るのではないでしょうか。

子どもたちみんなが笑顔でありますように。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。
↓関連記事↓


最後まで読んでいただき、ありがとうございます。「面白かった!」と少しでも感じていただけましたなら「スキ」していただけると、とっても励みになります!また遊びにきてください。全記事サイトマップ→https://note.com/kira_rin/n/na833d2ecd1be