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【ドイツパン職人絵ッセイ】オースターフラーデン〈前編〉

ドイツでは、復活祭は大切な祝祭日です。
特に聖金曜日(Karfreitag)、
復活祭当日(Ostersonntag)、
復活祭月曜日(Ostermontag)はドイツ全土で祝日となり
バイエルンではお店もほとんど閉まります。
ここからの二週間は学校もお休みになるので、
多くの方が遠方の実家に帰省したり
親戚でゆっくり集ったりして過ごします。
日本のお正月にちょっと似ているかもしれません。

お休みに入ったら私が絶対やりたかったこと。
それは、オースターフラーデンを焼くことです。
オースターフラーデンは、ドイツの伝統的なイースターのパン。
しっとり甘いパン生地に、レーズンやアーモンド練り込まれています。
クリスマスのシュトレンに近いですが、もう少し軽い仕上がりです。

私が修行していたパン屋さんでは
毎年それはそれは沢山のオースターフラーデンが焼かれました。
マイスター試験でも焼かなければいけない課題の一つだったので、
私にとっては思い入れのあるパンでもあります。

実はイースターのお休みに合わせて、
二週間ほど前から林檎の酵母液を仕込んでいました。
オーガニックの林檎を切って瓶に詰め、水を注いで一週間。
この部屋で酵母を起こすのは初めてだったからか
なかなか出だしの元気がありませんでしたが、
最終的にはぷくぷくシュワシュワと泡立ってくれました。
酵母液が準備できたら元種作り。
何度か粉と水でかけ継いで、酵母の力を強くしていきます。
そうして十日以上の時間をかけて、
パンを焼けそうな元種を育てることが出来ました。

イースター最初の祝日、聖金曜日。
仕事がないので、イースター菓子の準備にはうってつけです。
元種の他に全粒粉の前生地をもう一種用意し、
油抜きしたレーズンと乾煎りしたアーモンド、
それから冬に作っておいたオレンジピールを
果物のジュースに漬け込みました。
それらをすべて一晩寝かせ、翌日の午後に備えます。

土曜日は復活祭前の最後の出勤日。
連休前のソワソワするような独特の雰囲気の中,
深夜からチームの皆で力を合わせ、沢山のパンを焼き生地を仕込みます。
そして帰り際には
Frohe フローエOsternオースタン !(素敵なイースターを!)」
と声を掛け合い、仕事を終えました。
さぁ、やっとお休みモード。
楽しみだったオースターフラーデン作りの時間です!

Illustration by Asami Kira 



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