コロナをきっかけに、体育「2.0」へ。
今、体育が危機を迎えています。
皆さんご存じの通り、2020年度の学校教育は従来とは大きく変わります。現状1クラス40人での授業はできません。対面型のグループワークも控えた方がよいでしょう。とにかく3密を避けるにあたって、最も存在が危ぶまれる教科の1つが体育です。
体育において生徒同士の接触は日常であり、仮に2.0mというソーシャルディスタンスを保つとするならば、学習できる内容は非常に制限されてしまいます。リモートで行う授業ならなおさらです。
5/1に出された文科省「新型コロナウイルス感染症対策の現状を踏まえた学校教育活動に関する提言」でも、体育の授業において密集したり、児童生徒が近距離で組み合ったり接触したりすることを避けるよう提言されています。
このままだと、体育の授業は半分しかできない??
以下、コロナ禍における体育の実施可能な内容(中学校ベース)を図にしてみました。(あくまで私個人の感覚です。ご意見、コメントお願いします)
屋外、または室内でも個人でできそうな陸上競技やダンスは実施可能性が高い種目として赤円で、個人と密着する武道(柔道・剣道・相撲)や水泳は実施が難しい種目として青円で表しました。環境ややり方によっては実施可能なものは真ん中に配置しています。
2020年度は、青円の種目は実施が難しいと考えられます。となると、1年間で扱うはずだった内容の半分が学習できない、という形になってしまいます。これは大問題ですね。
ただ、それは従来の体育の「やり方」ならです。
体育2.0へのみちすじ
ここで2つの考え方をご紹介します。
コンテンツ・ベースと
コンピテンシー・ベースです。
コンテンツ・ベースとは、「何を知っているか」「何ができるか」という、領域固有の知識や技能の習得を最優先の課題とした考え方。
一方コンピテンシー・ベースとは、学校教育の守備範囲を知識・技能の習得にとどめることなく、「初めて出会う問題場面で効果的に活用する」ための認知スキルや意欲・自己調整能力まで拡張する、という考え方です。<那須(2014)を基に作成>
では、先ほど述べた「従来のやり方」とは、上記の2つのうちどちらでしょうか?
もちろん、従来の体育は「コンテンツ・ベース」となります。補足しておきますが、私はコンテンツ・ベースを否定しているわけではなく、これからの社会状況を鑑みるとコンピテンシー・ベースに移っていく必要があるのでは?というスタンスです。日本教育は戦後確かに、コンテンツ・ベースで確かな成果をあげているのも確かです。
新型コロナウイルスによる今の世界情勢も、人類にとってまさに「初めて出会う問題場面」です。今後も、より一層のグローバル化やAIの発達により、コンピテンシー・ベースの教育の在り方は加速していくと考えられます。
ところで、
「今学校における学習内容の話をしても、そもそも学習指導要領でやる内容決まってるんだから意味ないじゃないか!」
と、お思いの先生方もいらっしゃるでしょう。確かにその通りです。
ただ、今日本の学校現場には「弾力的なカリキュラム編成」が要請されています。過去にそのことを綴った記事がありますので良ければ下記リンクからご覧ください。
では、体育におけるコンピテンシー・ベースの授業とはどういったものなのでしょうか。あくまで一例ですが、今年から小学校で施行されている指導要領では「学びに向かう力・人間性」の育成が目指されていますね。「学びに向かう力」の中でも「他者と協働する力」は重要だと言われています。
この「他者と協働する力」というコンピテンシーを育てることをベースとして、授業を創っていくとします。そうすると、授業で大事にされるべきは「技ができること」ではなく、「周りへの気配りができているか」「仲間とコミュニケーションをとれているか」ということになってきます。それが評価観点にもなり得るでしょう。(この評価をどうやるかという問題もありますが)その観点が決まった後に、今できる種目で授業を行う、という流れがコンピテンシー・ベースの授業づくりとなります。ご参考になれば幸いです。
おわりに~なぜ2.0なのか~
今回綴らせていただいたコンピテンシー・ベースは、カリキュラムを構想するうえで有益な視点であり、「生きる力」にもつながる概念です。休校期間で少し、ゆとりが生まれている今だからこそ、1ステップ戻って学校で目の前に育てるべき資質・能力を再考することで、コロナ禍を逆手にとった学校教育の充実がはかられるのでは?という大学院生の戯言でした。
ちなみにタイトルの「体育2.0」は、アップデートの意とソーシャルディスタンスにおいてとるべき距離、2.0mをかけています。笑
各地で学校再開が近づいてきましたが、引き続き全国の先生方は体調を第一にしていただきたいですね。。。
今回も最後までご拝読いただき、ありがとうございました。
2020.5.15
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?