無題 (書きかけ短編小説)

無題

ガッガガ
滑りの悪い戸を引くと、埃と古い木と土のにおいがした。
中は薄暗く、外から昼の光が足元に伸びている。戸を開けた際に少し吹き込んだ風に埃がキラキラと舞う。
外観は昔からある駄菓子屋という風貌だが中に菓子類は一切無く、代わりに棚にいくつもの瓶が置かれている。
私はゆっくりと中へ進んだ。革靴にスーツという格好で来たことを、場違いに感じた。狭い店内では自分は異質である。
消しゴムほどの小さな瓶から、自分の顔くらいの大きさの瓶まで様々な瓶が所狭しと置かれている。どの瓶も中身は入っていない。
瓶屋なのか。聞いていた話とは違う。
しんとした店内に段々と居心地の悪さを覚え始めた。真夏ということもあり、じんわりと首もとにかいた汗が気持ち悪い。
「あの、すみません」
奥の方へ、なるべく大きな声で呼び掛けてみた。返事はない。

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