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1979年 4月 今は亡き大学のクラスメイト 12文

 2023年6月、私は十数年ぶりに開いた大学入学時のクラス会に電車で向かっている。場所は高級住宅街にある大学近くの居酒屋である。私が予約したので舌が肥えている参加メンバーにはお気に召さなかったかもしれない。集まったメンバーは女性6人、男性6人である。六十は過ぎているが男性陣は家の後を継いだ社長や大学教授などまだまだ現役のひとが多い。女性陣はもともと良家の子女ばかりで悠々自適の日々を送っているようだ。
 「ずいぶん前に亡くなって、君と仲良かった彼はなんていう名前だったっけ」と私に問いかけられた。私はとっさに答えられなかった。
 1979年7月 ソニーのウェークマンが発売された。今でも流行に敏感なK君はいち早く持ち歩いていた。そんな時、亡くなったS君と話すようになった。きっかけはなんだったか忘れたが、席順が近かったのかもしれない。彼は片道2時間半かけて実家から通っていた。私は地方出身の田舎ものであったためどことなく田舎の匂いがする彼といると安心できたのかもしれない。物静かで優しい人だった。グランドホッケー部に所属していたがレギュラー選手としては活躍していなかった。私が2年生になり、どんどん都会の風に吹かれエセ東京人に染まるにつれ、なんとなく彼とは疎遠になっていった。
 大学入学時のクラスメイトは52人いた。私が知る限りにおいて既に5人、男ばかり二十代、三十代、四十代、五十代とそれぞれの代で亡くなっている。
 まず、クラスで一番優秀だったT君、そしてS君、酒好きだったN君、外見は粗暴のようなのであるが優しかったT君、そしてギターが好きだったT君、今、彼らと話していた時のことが思い浮かんできた。
 6月のクラス会で集まった12人、みんな会えば四十年以上前に戻っている。それぞれの歩みを知る由もないのだが、こうやって会えることに感謝している。会の終わり際に「来年はわかる限りのクラスメイトに案内し、ホテルを経営しているM君の所で大々的にクラス会を開きたいね」と私が言うとみんな「よろしくね」と記念写真を撮った。それを見て年を取ってしまった現実を思い知らされる。
 数日たって、入学時のクラス名簿と十年前に同窓会事務局に調べてもらったクラスメイトの住所をダンボール箱から捜し出せた。三十人ぐらいの消息はつきとめられるかもしれない。
 来年のクラス会の時は、あらためて亡くなった5人の話もみんなでしたい。一緒にクラス会に参加してもらうよ。よろしくお願いいたします。
2023.07.04

今年のクラス会もあと一か月後の開催となる。結局、参加人数は昨年より4人増えただけで16名となった。私がほかのクラスのメンバーの消息をつきとめることをしなかったためである。でも4人増えた。今年は高級住宅街にある大学近くのフランス料理店で開催することにした。亡くなった5人のクラスメイトの話もして、合計で21名の参加のクラス会を楽しみたい。今から、みんなと会えることが楽しみである。そして幸せである。ありがとう。
2024.06.22

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