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【内部通報制度】失敗しない業務従事者の定め方

実効性の高い内部通報制度を構築し、運用するためには、内部通報を適切に受付し、調査を行い、当該調査の結果、問題行為が明らかになった場合には、是正に必要な措置をとる必要があります。

そこで、まずは次の3つの業務に従事する者を明確に定めることが必要になります。

1.内部通報受付業務
  ⇒「内部通報受付業務従事者」として指定する。
2.調査業務
  ⇒「調査業務従事者」として指定する。
3.是正措置業務
  ⇒「是正措置業務従事者」として指定する。

ただし、業務従事者を定める際には留意しなければならないことがあります。

そこで、今回は、
●失敗しない業務従事者の定め方
●業務従事者を定める際の留意点

について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。

■「内部通報受付業務従事者」の定め方(例)

1.内部通報制度を所管する部署を定める

一般的には、コンプライアンス部総務部が所属部署になります。
所属部署を人事部とすることが妨げられるものではありませんが、人事に関する権限を持つ人事部に内部通報をすることを躊躇(ちゅうちょ)する者が存在し、そのことが通報対象事実の早期把握を妨げるおそれがあることに留意が必要です。

2.所管部署に在籍する者の中から「内部通報受付業務従事者」を指定する

コンプライアンス部を所管部署と定めた場合、当該部署の在籍者の中から「内部通報受付業務従事者」を指定します。

「内部通報受付業務従事者」には、「公益通報者保護法」「指針」(公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号))、「指針の解説」(公益通報者保護法に基づく指針(令和3年8月20日内閣府告示第118号)の解説)についての知識が求められるとともに、コミュニケーションスキル等が求められるなど、一定の能力・適性を有する者を指定することが重要になります。

例えば、コンプライアンス担当役員コンプライアンス部の部・次長が望ましいものと考えます。

■「調査業務従事者」の定め方(例)

1.「内部通報受付業務従事者」が「調査業務従事者」を兼務する

「調査業務従事者」には、「内部通報受付業務従事者」と同様に、「公益通報者保護法」や「指針」、「指針の解説」についての知識が求められることから、例えば、コンプライアンス担当役員コンプライアンス部の部・次長が望ましいものと考えます。

2.事案に応じて、個別に「調査業務従事者」を指定する

「調査業務従事者」には、高度な調査能力事実認定能力が求められるケースがあります。
したがって、事案に応じて、個別に監査部門長弁護士(顧問弁護士を含む)等を指定することが考えられます。

■「是正措置業務従事者」の定め方(例)

1.「内部通報受付業務従事者」が「是正措置業務従事者」を兼務する

「是正措置業務従事者」には、「内部通報受付業務従事者」と同様に、「公益通報者保護法」や「指針」、「指針の解説」についての知識が求められることから、例えば、コンプライアンス担当役員コンプライアンス部の部・次長が望ましいものと考えます。

2.事案に応じて、個別に「是正措置業務従事者」を指定する

「是正措置業務従事者」には、各種の専門的な事業内容を理解していることが必要なケースがあります。
したがって、事案に応じて、当該事業の担当部門長等を指定することが考えられます。

■個別に「調査業務従事者」「是正措置業務従事者」を指定する際の留意点

個別に「調査業務従事者」「是正措置業務従事者」を指定することによって、社内調査等が内部通報を端緒としていることを、当該指定された者に事実上知らせてしまう可能性があります。
そのため、内部通報者保護の観点からは、「調査業務従事者」「是正措置業務従事者」の指定をしなくても内部通報者を特定させる事項を知られてしまう場合を除いて、指定を行うこと自体の是非について慎重に検討する必要があります。

■業務従事者を定める際の留意点

「内部通報受付業務従事者」、「調査業務従事者」および「是正措置業務従事者」を定める場合に留意しなければならないことがあります。

それは、改正公益通報者保護法においては、業務従事者は「公益通報者を特定させる事項」を漏らしてはならないという「守秘義務」を負う点にあります。

また、守秘義務違反者に対しては、刑事罰(30万円以下の罰金)が科されることになります。

なお、「公益通報者を特定させる事項」とは、次の事項をいいます。

「公益通報をした人物が誰であるか「認識」することができる事項をいう。公益通報者の氏名、社員番号等のように当該人物に固有の事項を伝達される場合が典型例であるが、性別等の一般的な属性であっても、当該属性と他の事項とを照合させることにより、排他的に特定の人物が公益通報者であると判断できる場合には、該当する。「認識」とは刑罰法規の明確性の観点から、公益通報者を排他的に認識できることを指す。」

「指針」および「指針の解説」においては、次の考えが示されています。

「事業者は、内部公益通報受付窓口において受け付ける内部公益通報に関して公益通報対応業務を行う者であり、かつ、当該業務に関して公益通報者を特定させる事項を伝達される者を、従事者として定めなければならない。」
「事業者は、従事者を定める際には、書面により指定をするなど、従事者の地位に就くことが従事者となる者自身に明らかとなる方法により定めなければならない。」

したがって、業務従事者に通報者を特定させる情報に関して慎重な取扱いをさせ、また、業務従事者が予期せずに刑事罰が科される事態を防ぐために、自らが守秘義務を負う立場にあることを明確に認識させる必要があります。

そこで、次の対応を検討しましょう。
1.業務従事者を定める際には、「書面」により指定する。
2.指定された業務従事者から、「守秘義務を負うこと、守秘義務に違反しないこと」を約束する「誓約書」の提出を受ける。

以上を踏まえ、自社の「内部通報制度」の構築に向けた取組みを加速していきましょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)


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【追伸2】

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