【内部通報制度】不利益な取扱いを防止する6つの方法
従業員(退職者を含む)や役員が通報対象事実を知ったとしても、内部通報を行うことによって、不利益な取扱いを受ける懸念があれば、通報することを躊躇(ちゅうちょ)してしまうことが想定されます。
これでは、法令違反等の問題を早期に把握することが困難になってしまいます。
そこで、今回は、
●不利益な取扱いを防止する6つの方法
について、解説しますので、ぜひ最後まで、ご覧ください。
■内部通報に関する不適切な取り扱いについて(2021年7月16日、日本郵便株式会社公表)
●事案の概要
2018年10月、福岡県筑前東部地区連絡会に所属する複数の郵便局長が、同連絡会に所属する他の郵便局長に関する内部通報を行いましたが、2018年12月以降、同連絡会の地区統括局長(被通報者の父/以下「元統括局長」)が通報者を特定する行為におよび、その後、他の郵便局長を巻き込んで通報者に対するパワーハラスメントを行いました。
通報者を特定する行為およびパワーハラスメントを行った郵便局長9名に対しては、2021年3月、停職2名を含む懲戒処分を行いました。
その後、本事案に関連し、元統括局長の行為が刑事裁判で有罪判決を受けました。
■「指針」からの要請
「指針※」においては、次の考えが示されています。
事業者の労働者及び役員等が不利益な取扱いを行うことを防ぐための措置をとるとともに、公益通報者が不利益な取扱いを受けていないかを把握する措置をとり、不利益な取扱いを把握した場合には、適切な救済・回復の措置をとる。
不利益な取扱いが行われた場合に、当該行為を行った労働者及び役員等に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して、懲戒処分その他適切な措置をとる。
(※)指針
公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(令和3年内閣府告示第118号)
■不利益な取扱いを防止する方法
内部通報者を不利益な取扱いから保護する観点から、次の体制整備を検討しましょう。
1.「不利益な取扱い」とは何かを明確にし、「内部通報制度規程」に規定する。
【不利益な取扱いの例】
・従業員たる地位の得喪に関すること(解雇、退職願の提出の強要、労働契約の終了・更新拒否、本採用・再採用の拒否、休職等)
・人事上の取扱いに関すること(降格、不利益な配転・出向・転籍・長期出張等の命令、昇進・昇格における不利益な取扱い、懲戒処分等)
・経済待遇上の取扱いに関すること(減給その他給与・一時金・退職金等における不利益な取扱い、損害賠償請求等)
・精神上・生活上の取扱いに関すること(事実上の嫌がらせ等)
2.不利益な取扱いが行われた場合には、当該不利益な取扱いを行った役職員に対して、行為態様、被害の程度、その他情状等の諸般の事情を考慮して適切な処分等を科す旨を「内部通報制度規程」に規定する。
3.内部通報したことを理由として、内部通報者に対して不利益な取扱いを行ってはならない旨を、研修会等の機会を活用して役職員に教育・周知する。
4.内部通報受付窓口においては、不利益な取扱いに関する相談を受け付ける旨を「内部通報制度規程」に規定する。
5.不利益な取扱いが行われた場合には、当該不利益な取扱いを受けた役職員に対して、適切な救済および回復のための措置を講じる旨を「内部通報制度規程」に規定する。
6.不利益な取扱いを受けていないかを把握する。
【不利益な取扱いを受けていないかを把握する措置の例】
・内部受付業務従事者(内部窓口にて通報または相談を受け付ける者)は、内部通報者に対して、不利益な取扱いを受けていないか能動的に確認しなければならない旨を「内部通報制度規程」に規定し運用する。
・内部通報者が不利益な取扱いを受けた際には、内部受付業務従事者に連絡することができる旨を「内部通報制度規程」に規定するとともに、不利益な取扱いを受けた際には、内部受付業務従事者に連絡するよう、あらかじめ内部通報者に伝えておく。
以上を考慮したうえ、明確なルールをあらかじめ「内部通報制度規程」に盛り込むなどして、不利益な取扱いを防止していきましょう。
福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
【追伸】
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