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【改正公益通報者保護法】労働者が保護される要件とは?

内部通報制度のさらなる活用を促進し、早期是正により被害の防止を図るため、改正公益通報者保護法が2022年6月までに施行されることになります。

本改正事項の一つが
■労働者が保護される要件の緩和
です。

改正公益通報者保護法により、現役の労働者に加え、退職から1年以内の労働者(労働者であった者、派遣労働者であった者等)も公益通報を行うことができるようになります。

公益通報の種類は、次のとおりです。
1.内部通報(事業者への通報)
2.外部通報(行政機関)
3.外部通報(マスコミ等)

〇上記1.内部通報(事業者への通報)の保護要件

通報対象事実(※1)が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する場合

通報者が主観的に通報事実があると信じて公益通報した場合、公益通報したことを理由として、雇用元(旧雇用元)や派遣先(旧派遣先)から不利益な取扱い(※2)を受けたとしても、法律が保護してくれることになります。

※1
・「対象となる法律」に違反する犯罪行為+最終的に刑罰につながる行為
・「対象となる法律」において規定する過料の理由とされている事実
   +最終的に過料につながる行為(新設)

●対象となる法律

※2
解雇、降格、減給、退職金の不支給 等

〇上記2.外部通報(行政機関)の保護要件

次の一.二.のいずれかの要件を満たすことで、法律が保護してくれることになります。

一.通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合

「信じるに足りる相当の理由がある」
これは「真実相当性」といわれるもので、単なる憶測等ではなく、通報内容が真実であることを裏付ける証拠や関係者による信用性の高い供述など、相当の根拠が必要となります。

この点が、外部通報(行政機関)のハードルを上げる要因とされています。

二.通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料し、かつ、次に掲げる事項を記載した書面(電子的方法等を含む)を提出する場合

イ.公益通報者の氏名または名称および住所または居所

ロ.当該通報対象事実の内容

ハ.当該通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると思料する理由

二.当該通報対象事実について法令に基づく措置その他適当な措置がとられるべきと思料する理由

この点が、改正公益通報者保護法により新設されます。
前記一.で求められる「真実相当性」は必要なく、客観的な証拠といった真実相当性がない場合であっても、自分の氏名等を記載した書面を行政機関へ提出すれば、仮に通報対象事実がなかったとしても、通報者が責任を問われることはありません。

これにより、外部通報(行政機関)のハードルが下がるものと考えられます。

〇上記3.外部通報(マスコミ等)の保護要件

次の一.二.のいずれの要件も満たすことで、法律が保護してくれることになります。

一.通報対象事実が生じ、又はまさに生じようとしていると信じるに足りる相当の理由がある場合(真実相当性がある)

二.次のいずれかに該当する場合

イ.内部通報(事業者への通報)・外部通報(行政機関)をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信じるに足りる相当の理由がある場合

ロ .内部通報(事業者への通報)をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され、偽造され、又は変造されるおそれがあると信じるに足りる相当の理由がある場合

ハ.内部通報(事業者への通報)をすれば、役務提供先が、当該公益通報者について知り得た事項を、当該公益通報者を特定させるものであることを知りながら、正当な理由がなくて漏らすと信じるに足りる相当の理由がある場合

ニ.役務提供先から内部通報(事業者への通報)・外部通報(行政機関)をしないことを正当な理由がなくて要求された場合

ホ.書面(電子的方法等を含む)により内部通報(事業者への通報)をした日から20日を経過しても、当該通報対象事実について、当該役務提供先等から調査を行う旨の通知がない場合又は当該役務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合

へ.個人の生命若しくは身体に対する危害又は個人(事業を行う場合におけるものを除く)の財産に対する損害(回復することができない損害又は著しく多数の個人における多額の損害であって、通報対象事実を直接の原因とするものに限る)が発生し、又は発生する急迫した危険があると信じるに足りる相当の理由がある場合

この点については、改正公益通報者保護法により、上記ハ.が新設されます。
また、上記へ.について、「個人の生命若しくは身体」に加えて「財産に対する損害」が新設されます。

以上の改正により、現行に比べ外部通報(行政機関)・外部通報(マスコミ等)が行いやすくなる一方で、事業者にとっては、外部通報(行政機関)・外部通報(マスコミ等)されることで、対応にかかるコストが増加すること等が懸念されます。

そこで、

〇従業員に対しアンケート調査を実施する。

〇貴社の内部通報制度について、
・「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」
・「公益通報者保護法に基づく指針(令和3年8月20日内閣府告示第118号)の解説」
・内部通報制度認証基準
に適合しているか否か点検する。

〇「内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度)」を活用する。

これらの取組みにより、貴社の内部通報制度に対する従業員の信頼性を向上させ、内部通報(事業者への通報)を促すことが求められます。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)

【追伸】

「改正公益通報者保護法」に対応した
「内部通報制度規程(雛形)」をご提供します。

【追伸2】

この記事の内容は、YouTubeでも紹介しています。


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