見出し画像

【改正公益通報者保護法】労働者数300人超の事業者に求められる体制

内部通報制度のさらなる活用の促進を図るため、改正公益通報者保護法が2022年6月までに施行されることになります。

本改正事項の一つが
■労働者数300人超の事業者に対する体制整備の義務化
です。

労働者数300人超の事業者は、内部通報(事業者への通報)に適切に対応するための必要な体制整備が義務化されることになります。

なお、「労働者数300人超」とされる「労働者」とは、常時使用する労働者をいい、繁忙期のみ一時的に雇い入れるような場合を除き、パートタイマーや派遣労働者も労働者に含まれます。
ただし、「役員」は、労働者に含まれません。

労働者数300人以下の事業者は、努力義務とされています。

■求められる体制整備

内部通報(事業者への通報)については、
受付⇒調査⇒是正措置
の3つのプロセスを機能させるために、事業者には、主に次の体制整備が求められます。

1.内部通報(事業者への通報)窓口の設置
2.内部受付業務従事者(内部窓口にて通報や相談を受け付ける者)の指定
3.外部受付業務従事者(外部窓口にて通報や相談を受け付ける者)の指定(※外部窓口を設置する場合)
4.調査業務従事者(通報対象事実に関する調査を行う者)の指定
5.是正措置業務従事者(通報対象事実が明らかになった場合に、通報対象事実に関する是正措置等を講じる者)の指定
6.業務従事者からの「誓約書」の提出
7.業務従事者に対する教育・研修

上記2.内部受付業務従事者、4.調査業務従事者、5.是正措置業務従事者の3者(総称して「業務従事者」という)は、1人が兼任することも可能です。

また、事前に、業務従事者3者を各々1名ずつもしくは複数名を包括的に指定しておく方法や、さらに、事前かつ包括的に指定した業務従事者に加えて、通報事案に応じて、個別に業務従事者を指定する方法も考えられます。

ただし、いずれの方法をとる場合でも、「誰が業務従事者であるのか」を明確にしておかなければなりません。

その理由は、法改正の目玉である
■刑事罰つき守秘義務の導入
です。

改正法第12条は、業務従事者の義務として、
「公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者は、正当な理由がなく、その公益通報対応業務に関して知り得た事項であって公益通報者を特定させるものを漏らしてはならない。」
と定め、
改正法第21条は、
「第12条の規定に違反して同条に規定する事項を漏らした者は、30万円以下の罰金に処する。」
と定めています。

つまり、業務従事者または業務従事者であった者に対し、通報者を特定させる情報の守秘を義務付け、義務違反に対して刑事罰が導入される点に注意が必要です。

したがって、業務従事者は守秘義務を負うことを明確にするために、業務従事者からあらかじめ「誓約書」を提出させることも検討すべきでしょう(上記「求められる体制整備」の「6.業務従事者からの「誓約書」の提出」)。

また、業務従事者には、高い知識と技能が求められ、重要な役割と責任を担うことから、業務従事者に対し教育・研修の場を提供(上記「求められる体制整備」の「7.業務従事者に対する教育・研修」)するとともに、業務従事者の顕著な貢献が認められた場合には、積極的に評価すること(既存の人事評価制度や社員表彰制度等を用いる等)によって、業務従事者の意欲・士気の発揚を図る取組みも検討すべきでしょう。

福田秀喜(行政書士福田法務事務所)
Facebookでフォローする
メールマガジンでフォローする

【追伸】

「改正公益通報者保護法」に対応した
「内部通報制度規程(雛形)」をご提供します。
 ⇒ https://kinyutorihiki.com/naibutuuhou/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?