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【朔 #153】こんなところにも書くことの快楽がある

 十字架にかけられた聖母、
 などという歌詞、
 なんたるイメージ!
 ストア派・・・→
 かつ、
 笑え。
 「書く」=「搔く」ことの快楽は……、
 俳人協会から出ている自註現代俳句シリーズで先月刊行された『小川軽舟集』。そのなかで「高野槙春月さらにのぼりけり」の句に付された文章にてかくあり。

この句を短冊に書くのは気分がよい。「さらにのぼりけり」のところで筆が走り、心が弾む。

小川軽舟『小川軽舟集』(俳人協会)
七三頁

 こんなところにも書くことの快楽がある。しかし、この絶対的とも言える句の抒情を見よ。モチーフだけでは決して生まれないものである。作者が筆を走らせる時に感じる快楽を、読者もまた感じる。見ることが触れることになる。視線がひとつの手になる場としての一句。活字にしても、漢字や平仮名のバランスが重視されるのはこういうところにある。但し、これからは自らの肉筆(そうか、肉!)を得る前にパネル入力に移行する世代が増えるであろうから、このような読みの楽しみは無くなる定めなのかもしれない。

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