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【朔 #129】那珂太郎から聞いた話を日記に書き留めた

 「梅雨らしいような、
       けれど曇天の日のほうが
    多いらしいわよ」
 「そうね。
          中国語で『今日』は?」
 「今天」
 「晴天」
 夜々、ビカビカと街灯が光る露台で二匹の目高が語る。彼女達の睡眠を見倣いたい。豚が青野に立っていることと無関係ではない寂しさが、遠く、梅雨の街に卒業証書を掲げる恋人を置き去りにするのだろうか。
 それとも、
 Noctiluca scintillans?
 夜々、夜々、亢進する。
 そんな南米の神様みたいな顔されても、
 私は、
 死なない──。槍が、
 一回転して眠たくなった。
 那珂太郎から聞いた話を日記に書き留めた。
 肝要なのは「は」。
 波、波、波、波、波、波、六波羅探題。
 煙色した苔(苔くさい雨に唇泳ぐ挽肉器/赤尾兜子)からほのとの陰(ほと、殆ど)。
 超自然的質量の列柱を崩し、
 海底を裏返してゆく日本武尊が幼い。

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