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芥川龍之介『蜜柑』の勧め。

私のお気に入り作品の1つである芥川龍之介『蜜柑』についてどうしても語りたくなったため、記事を作った。近代文学に触れたいけどどうしたらいいかわからない初心者の方を大いに歓迎したい。そして、同志の方がいれば尚嬉しい。
また、これはただの読書好きが作成した偏愛記事であるということにも注意して戴きたい。


近代文学は敬遠されがち

前回の『ドグラ・マグラ』の件でも言ったように、日本近代文学は難しくて崇高な作品類だと思われがちだ。読書好きでも敬遠してしまう分類だろう。(近代の作品をまとめて「古典」と言っている読書アカウントを時たま見かけるがそこにはもの申したい時がある。古典ではない。)

興味はあるけれど、どれから読んだら良いのかわからないという人がいたのなら、是非読んで欲しい作品がある。それは、芥川龍之介『蜜柑』だ。

芥川龍之介を知らない人は少ないだろう。彼の作品『羅生門』は教科書に載っているし、かの文豪異能力バトル漫画ではわりと強キャラである。文豪と錬金術師が図書館を守るアプリではメインキャラだ。

しかし『蜜柑』を知っている人はどのくらいいるのだろうか。私的には、芥川至上もっとも優しくて、鮮やかな物語だと考えている。それ故に、この物語を知らないのは本当に勿体ない。

芥川龍之介『蜜柑』おすすめポイント

『蜜柑』をおすすめしたいポイントは以下の3つ。

1・短い作品

芥川龍之介は短編を主に書いている。その点で、芥川はどの作品もおすすめ出来る。特に短編は、余分を削ぎおとし、洗練されたエキスだけ作品に落とし込んでいるため非常に読みやすい。

2・理解しやすい設定

近代文学で読みにくいと思われる点として避けては通れない、時代背景というものがある。
旧仮名遣いは勿論のこと、当時と現代の思考のギャップは当然ある。
その点、芥川の作品は理解しやすい設定が多い。今回の『蜜柑』だけでなく『鼻』や『蜘蛛の糸』など人間の底にある変わらぬものを題材にしていることが多いため、ギャップが少なくて済む。仮名遣いに関して、青空文庫にある概ねの作品は現代仮名遣いに直したものを上げてくださっている。
感謝しかない。

3・映像美

私が『蜜柑』を推している一番の理由である。
読書で「映像美」とは何を言っているんだと思われるだろう。
しかし、読書とは文字を追い文字を楽しむのではなく、文字を追いそれから連想した映像を楽しむものと、私は考えている。
この映像が読後の感動をいつまでも残してくれたり、ふとした時に思い出したりすることがある。そうしてノスタルジックに熟成され、日々良い読書体験になっていく。

『蜜柑』は、出だしモノクロであるのに、娘が蜜柑を投げた瞬間に、パッと鮮やかカラーになる。
瞬間、音が消えて読者側の空気さえも澄んだような気分になる。あたたかい気持ちになる。
主人公や娘が思っていることや行っていること、その時間もほんの少しでしかないはずなのに、これほどまでに鮮やかで濃密に表現出来るとは。
最初に読んだ時の感動は凄まじく、スマホから顔を上げてしばらくぼんやりとしてしまった。
これを文章のみでやってのける芥川龍之介は天才としか言いようがない。

青空文庫で読める『蜜柑』


こんなに鮮やかな体験をしたなら、読書が元々好きな人だけでなく、読書嫌いな人でも読書って面白い、近代文学って面白いのかもしれないと感じるだろう。
そう思わせるほど、芥川龍之介『蜜柑』はやはり洗練された作品だ。
昨今では、電子書籍も主流になってきている。
日本近代文学は青空文庫で大体読めようになっている。しかも無料だ。お得でしかない。

青空文庫の作品を読めるアプリなどもあるので好きなものをダウンロードするともっと読みやすい。
ちなみに私が長年使っているのは、「青空文庫ビューアAd」というアプリだ。
このアプリが採用しているフォントがお気に入りで使っている。

スマホでちょいちょいと読みやすい芥川龍之介の作品を読んでみて欲しい。
そして是非『蜜柑』を読んでこの読書体験をしてほしいと思う。

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