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映画『君が君で君だ』〜ピュアでイッちゃってる私たちの物語

七夕の日に公開された新作映画「君が君で君だ」を見てきた。
新進気鋭の映画監督、松居大悟さんの最新作であり、
”言葉の匠”コピーライター阿部広太郎さんがプロデューサーとして関わっているということで「たぶんなんかコレ・・・一筋縄でいかないやつでしょ」と思った。もちろんプラスの意味で。そしてその期待は大当たり。
結果、2回も見てしまうこととなった。

初めて見た後の率直な感想は

①なんかすごい味わい深いけど何味なのかわからん!(ちょっとパニック)

②池松壮亮に向井理、そして高杉真宙。「イケメン俳優出演の爆笑コメディー!」だなんて思って見たら大火傷する案件ね(ウインク☆)

③”ある種の人間”には絶対刺さる。見せたい人の顔がいろいろ浮かぶな

あらすじはこちら
https://kimikimikimi.jp

池松壮亮演じる主人公たちは「ストーカー」とも言える行為を日々行っている。想いを寄せる韓国人女子・ソンを「姫」と崇め、彼女の部屋を毎日覗き、盗聴し、ゴミまであさる始末。主人公たちの行動は「究極」かつ犯罪行為スレスレ。いやかなりアウト!でも、でも。”ある種の人間”には痛いほどわかる、否定できない部分がある。

告白できないまま、好きな人を見つめ続けていたり。
全力で芸能人やアイドルを追っかけたり。
叶わないと知りながら、好きになってはいけない人に恋したり。
時には映画や漫画のキャラクターに夢中になってしまったり。

そんな、かっこ悪くてピュアで最高に幸せな黒歴史&崇めグセがある人は
きっと「君が君で君だ」という作品を”痛い”と苦笑いしながら味わいつくせると断言する。

恥を忍んで告白すると私も”ある種の人間”だ。小学生でドリカムのファンクラブに入り、中学ではバスケ部の清水先輩に想いを告げられないまま遠くから見守る日々。高校ではスカパンクバンドの追っかけがしたくで部活も辞めた。大学以降は痛すぎて書くのも憚られる。(劇中の向井理にまで“チンピラ姿なのに尊い…”と思ってしまった私の崇めグセよ)

それはさておき。

男女が出会って、恋に落ちて、ある結末に至るというような王道ストーリーではない。むしろ登場人物は誰一人として「恋愛」していない気さえする。
「依存」「崇拝」「執着」「自己愛」「好奇心」
いろんな思いがごちゃ混ぜになった結果生まれた「恋っぽい感情」。
そもそも恋心を解剖してみると、案外いろんなエゴやドロっとした感情が複雑に混ぜ込んであって大して美しくなかったりするのかもしれない。そして物語の本当のテーマは「狂気の恋慕」ではなく「自分の名前(本来の姿)を取り戻すこと」だったのかな、と気付いたのは2回目に見た時のこと。

見たら誰かに感想を伝えたくなる。「どう思った?」って聞きたくなる。
そんな映画だった。


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