見出し画像

家庭を持たいない私とその家庭的なチャイ

 まずは片手鍋を用意する。インスタントラーメンを作るのにちょうどいいサイズの鍋であると尚良し。おしゃれなミルクパンなんかをつかうよりか個人的には雰囲気が出ると思います。雪平鍋だとビジュアルも格好いい。
 それと底が広いことにより、早く沸かす事ができるという利点もあります。
 
 鍋に水を200cc入れ、火にかけ沸騰するのを待つ。強火であってもこれだけの水であれば、沸騰するのにはさほど時間がかからないけれど、何もせずに待つには些かばかり長すぎる。そんなときは本やら漫画でも読みながら待てばよろしい。きっとそれらを読み始めて楽しくなり始めたところでお湯が沸いて後ろ髪引かれながら閉じることになる。

 漫画といえば、少し前にSNSで知ってから漫画を読むようになった「キューライス」大先生。いつも名前が頭の中で、S.キューブリックや林田球先生と混ざって「キュー・・・なんだっけ」といった具合に見失いがちになってしまうけれど。

 キューライス先生の作中では映画のオマージュとされる描写も多くて、そういったある種の「イースターエッグ」的な要素を探してみるのもまた楽しい。それが自分の好きな映画であったなら一層嬉しく感じたりもする。
 個人的には現在ネット上で連載されているバルディッシュホテルの続きが公開されるのをささやかな楽しみにしている。
 そんなキューライス先生の作品を見ている中で「随分と生活に対してストイックだなぁ」という印象を強く受ける。日々の食事であったり、自身に課している制約だったり、そういったものを見る度に自分にはそういった自制心のようなものが大きく欠如しているな、と感じて少しへこんだりもする。
 そろそろ、そんなストイックさからは大きくかけ離れたチャイ作りへと戻ろう。
 
 沸いたお湯にクローブを10粒、カルダモンを2粒すり鉢でゴリゴリしたものを投入する。本格的に現地の人間感を出したいという方は大きな石なんかでやってみると良いかもしれない。
 それにセイロンシナモンを一本(気持ち太めの物)を手でグシャっとして投入する。
 強火でグツグツなっている様を定期的に確認しながら元の半分くらいの湯量になるまで煮詰めていく(うっかりすると干上がってしまうので注意すること)。
 
 キューライス大先生に戻ろう。
 先生の作品に出会ったのはインスタグラムで漫画のヨモツヘグイを読んだことが始まりだった。
 そこからブログを知り、そこから結局ヨモツヘグイが書籍化すればそれを買い、アジャラが絵本になればそれを買い、それなりに「ファン」と言っても差し支えない様な今に至っている。
 ヨモツヘグイでは一話ごとにレシピが掲載されている。それを見る度に「うんまそうだなぁ」という知性を失った感想を抱き、作ってみようと一瞬は思うものの、調理の工程にミキサーの存在が出てきたり、あるいは「ナンプラー」といった限界な日常を送るアラサー男性の冷蔵庫に存在しない様な調味料が出てくる事により、結局作らず仕舞いで終わっている。
 ちゃんとした料理というものは結局それなりのコストを支払う必要があるんだな、と自身のだらしのない生活を憂う結果となる。
 
 さて、そろそろ鍋の中の水分が飛び(恐らく記事を読みながら同時進行で作っているという愚か者はいないと思うが演出として)、残った液体の色は茶色く汚らしい色になっているだろう。
 
 そんな汚らしい色をした液体に砂糖をカレーを食べるちょっと大きめなスプーンに大盛り2杯。そしてはちみつをふた回し入れてかき混ぜ、火を止める。
 
 そこにJANATのアールグレイを同じスプーンに2杯。間違っても日東紅茶などではなく、JANATを使ってほしい。紅茶などあくまでも嗜好品だし、チャイティといえばダストリーフ事、CTCのアッサムを使えという人が多数を占めると思うがそんなものは無視だ。私はJANATのアールグレイが好きなのでそれを使う。
 茶葉やスパイスはみんな大好きカルディに行けば売ってる。茶葉はちょっと高く感じるけれどフォートナム・アンド・メイソンだったりと比べると安いし、格安でスーパーに売られているものと比べると格段に旨い。ここでケチってクォリティを下げるくらいなら他の食事のクォリティを下げた方がマシだ。
 
 さて、茶葉を投入して2分蒸らし。この時間は本を読むには短すぎるので自身の人生や、その来し方、行く末などに関して途方もなく思考しながら過ごしてほしい。そんなものに意味など無いが、考えるという行為に意味は宿る(と私は思う)のでそういう日があってもいいんじゃあ、ないだろうか。

 また、今更だが砂糖や茶葉を投入する際にスプーンを鍋のフチに「カーンッ」とすると雰囲気が出るので参考までに。
 
 蒸らしが終わったら強火にかけ、牛乳を400ccゆっくりと回し入れる。それから強火で煮立たせる。吹きこぼれそうになったら火から遠ざけ、鍋の中が落ち着いたら再び火にかけ・・・という工程を2回ほど繰り返す。
 この工程はどういう意図があるのか私にはわからない。You Tubeで現地の方がそうやって淹れていたので真似をしているだけだ。言ってしまえば気分である。
 省略するのは自由だがそれによって味にネガティブな変化をもたらしたとしても私は知らない。きっとそういう人はこのレシピも流し読みしてオリジナリティに溢れた作り方をするタイプ(その中でもセンスがない人間はそれにより絶望的な出来栄えとなる)なのでそういう人はとりあえず「スキ」ボタンを押してフォローだけでもしておいてください。そして勝手に好きに作れ。
 
 煮立たせ終わったら茶こしで茶葉とスパイスなどの思い出を濾した後、耐熱ポットへと移す。その際、ポットからまた別の容器へ何度か移し替えを繰り返して温度を落ち着かせる。移し替えの際、高低差を付けると一層現地感も出るし、温度もすぐに落ち着く。これにより表面に膜が浮くのを防ぐ事ができる。
 
 温度が落ち着いてきたら完成。
 
 この時期、アイスで飲みたいという方は粗熱を取って冷蔵庫で冷やせばよろしい。
 
 疲れた日なんかにはめっぽう染みるチャイティ。
 
 よくカレー屋さんで食後に飲めたりするし、キューライス著「ヨモツヘグイ」第一話に収録されている「ヨモツカレー」でも作ってその食後にこのチャイティでも淹れてみてはいかがでしょ。
 私は未だに作れていないけれど。レシピ見た感じだと絶対美味しい。収録されている中で一番カンタンそうな「ニンニクメン」くらい作ってみようかな、なんて思うけれどこういうのって何故か行動に起こせない。不思議だ。
 そもそもSNSで見つけたレシピって保存はするものの、なかなか作ったり出来ない。なんでだろうなぁ。
 
 それはそうと、作中のレシピに「創味のめんつゆ」が出てくるんです。我が家もめんつゆは創味派なのでなんだか妙に嬉しく思う。創味のめんつゆ、旨いんだよな。
 
 ちょっと高いけど。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?