新宿的撲滅系You Tuber Kくん編

はじめに

 〇〇撲滅系You Tuberというものが数多く存在する。マルチ商法、投資詐欺や盗撮、そういった犯罪行為を行っている人間をカメラに捉えインターネットで公開するという内容のものだ。
 最近、おすすめにとあるYou Tuberが上がってきた為、そういった類のチャンネルを調べてみた。
 すると面白いものでその方向性というものは多岐にわたり、様々な社会的な「悪」とされるものを注意喚起という大義名分の元に糾弾するという動画が蔓延っていた。
 冒頭に上げた中の投資詐欺などは2023年の1月から3月までの間に金融庁の相談室への相談件数は1万5204件。前期と比べて増加傾向にあるようだ。長く続く不景気や様々な物の値上げ、そういった事象からくる不安感がこういった詐欺被害を増やす要因となっている。とされているが本当にそうだろうか。そういった側面からも気になり、ここでは詐欺撲滅系とされるYou Tuberにフォーカスを合わせ、2週間に渡りそういった動画を見漁ってみた所感をまとめていく。
 
 あくまでも私自身はただの一般人であり、法律だったりに詳しいわけでもないし、できる限りフェアな視点で道楽的にこの文章を書いているというところを留意頂きたい。

詐欺撲滅系チャンネル Kくん

 まず、最初におすすめ動画として出てきたK(仮)くん。彼は様々な投資詐欺やマルチ商法などを中心にその幹部や勧誘を行っているセミナーや集会、果てにはその自宅などにも「突撃」と称してカメラを片手に表れるYou Tuberだ。チャンネル名は伏せさせて頂く。そこはさほど重要じゃない。
 扱われる人間は実際に逮捕されている人間も居るし、企業としても業務停止命令などが出たりするものも多数存在する。
 
 実際、先述した通り、2023年で投資詐欺などで金融庁に寄せられた相談件数は1〜3月の間だけで1万5千件を越え、増加傾向にある。
 詐欺被害にあわないために必要なものは自身で考える力だが、それに至るためには考えるための材料となる情報というものはとても大切になる。ネット記事なども精査が必要なくらいに膨大な量存在するし、私の書く文章の様に長々と書いてあるだけで結論が結局ぼんやりしている、というものも多々存在する。そんな中で手軽に、視覚・聴覚的に入手出来る情報としての動画というものは注意喚起にとても重要な立ち位置となり得る。
 Kくんの他にもこういった同様の詐欺撲滅系のYou Tuberは多数存在する。例えばSくん(仮)は似たような動画を公開しているが、どちらかというとやり取りの音声と社名のみの公開でエンタメ性としては些かばかり「ライブ感」の様なものが失われているが注意喚起としてはとても興味深いものだった。
 Sくんと比べるとKくんはどちらかというと「過激」な内容が殆どを占めている印象だ。後者の動画のほうが伸びている事を考えると視聴者サイドとしてはこういった「過激なエンタメ」というものを強く求めているというのを強く感じられる。
 
 実際にKくんのチャンネルでさらされる人というのは善人では無いのかもしれない。しかし大きな声を出して追い回してカメラにおさめるというのは良いことなのだろうか。そんな疑問が浮かぶ。
 彼は警察でもなんでも無いし、言ってしまえばただの一般人だ。そして個人的に一番「ゾッと」したのはその動画にコメント欄には「応援しています」「こういう人がもっと増えてほしい」「社会に貢献してる」「もっと悪党を潰してほしい」といった類のコメントが多数を占めていたことだ。それでもやはりその行動に対して苦言を呈しているコメントも存在するがやはり目につくのは肯定的なコメントだ。イカれてやがる。
 SNSの発展を憂うおじさんは余りなりたくないがこういった側面を見るとなんだか嫌な気持ちになる(見なければ良いものだが、見てゾッとしたくなる心理に掻き立てられつい見てしまう)。
 以下は(不運にも)最初に私の目についた、という理由で主にKくんについて記述していく。
 
 Kくんは動画内で突撃を行う際に(恐らくアドレナリンなどの作用なのだろう)相手の言葉を待たず高圧的に詰める様や、周りに無関係の人が居ようが構わず大きな声で威圧するような素振りを見せている。
 場合によっては無関係の服装に着いてや生活態度などについてもツッコミを入れていたりとあくまでもエンターテインメント的な要素を強く作っている様にも感じる。
 また、一度相手の言葉に納得したような素振りを見せてから再び話を戻したり、質問攻めをする中で相手がだんまりを決めると、そこでまた別の質問を重ねる。それに対して答えようと口を開いた瞬間に最初に相手が答えられなかった質問に戻る。そういった手法で相手を追い詰めている様な印象を受けた。
 そういった行動からは会話をしよう、議論をしよう、と言うよりは相手を「イビリ」にいっているといった風に私の目に映った。
 カメラを向けて潔白を証明してよ!稼げるなら通帳とかみせて証明してよ!と大声で付け回すのは正しい行為なのだろうか、心理的にカメラを持って騒ぐ相手に通帳を見せたいと思わないだろう。その上で「じゃあ稼げてないんじゃん!」と騒ぐ。どうみてもまともな行動ではない。
 これはれっきとした「私刑」ではないだろうか。
 
 犯罪者、あるいはそれに準ずる人間に対しては何をやってもいい、それ以上のことを相手はやっているのだから、そういった思想が垣間見える。そして視聴者のコメントなどがそれを後押しする。
 自宅などに押しかける動画も公開されており、自宅の周りでは多少ぼかしは掛かっているものの、それは十分に特定に至ることの出来るほどの情報量を有していたりもする。動画に寄っては家庭持ちの家族の家に突撃するものなどもあった。

 取材としてであっても無関係の人間の住むマンションのエントランスに入ることも場合によっては不法侵入となり得る。その上、動画撮影なども含めるとそれはもう十分に最近流行りの「迷惑系You Tuber」の一派だろう。
 
 そんな彼が皮肉なことに「迷惑系外国人配信者の自宅特定して突撃してみた」という内容の動画までも公開していた。同系統のYou Tuberと連れ立って8人で夜に他人の家に押しかけるというものだ。その家には対象となる配信者以外の人間が住んでいるにも関わらず(それも家の所有者はその配信者ではない)、だ。
 昨今、迷惑系動画配信者というものが問題になって久しい中、同様の行動を取っているという事実には驚かされる。
 家の所有者の男性が「落ち着いて一人ずつ話しましょう」という提案をしているにも関わらず各々が言いたいことを喚き散らすといった様相だ。
 概要としては配信で差別的な発言をしたり公共の場でわいせつな音声を流したという事実に対して謝罪をさせる、といったものだったが終始「先に悪いことをしたのはそっちだ」といったスタンスを取っており、同行した他の配信者からは「日本人はみんな怒っている」といった発言まで出ていた。みんなではない。私はこの動画までそういった迷惑行為を知らなかったし知った上でも怒っていない。
 
 SNSでの迷惑行為の拡散というものはやはりその人間の属するコミュニティの中で常識というものが歪み、目的と行為がアンマッチになっていくことが原因だろう。この場合では本人はいたって本気で世直しをしよう、自分が道化になることで救われる人がいるならばいい。と自己犠牲のような心理すら働いていそうだ。
 Kくんの口から「僕ら信念持ってやってるんで」という言葉が複数回出ていたのはそのためだろう。人間の掲げる信念などどこまでも曖昧であるし、それを持っていたところで違法行為をしていれば撲滅される側と何ら変わりない。
 
 そんな彼のふくらはぎには「悪は必ず滅びる、悪事を行えば必ず天罰が下る」という有り難いお言葉が掘られているらしい。
 
私の再生した分の再生数が人気に繋がり、この様な行動が多くの人の目に触れ炎上すればいいな、と思いながらこの文をしたためております。
 
悪事に天罰が下りますように。

退廃的六畳間より愛を込めて。

かしこ

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