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常設展#1 展示風景、作品紹介

現在開催中の(Web主体)きのね企画グループ展である「常設展」の展示風景と作品説明をしていきます。
作品を正面から撮影したものは前回投稿した「常設展5/12—5/31「通販用」」をご覧ください。

今後も定期的に常設展を行っていこうと考えております。
出展作家様は基本的には現在運営しております、きのねHPの作家さんコラムページで更新してくださる作家様中心の出展になります。(第二回以降もあるということで“#1”を加えました)
それでは作家さんごとに作品紹介していきます!

紙透 みふ

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紙透 みふさんは今年3月に行ったグループ展“cute”できのね初出展いただきました。少女が日々抱える気持ちの動きをペインティングナイフでアクリルを重ねることで表現しています。
紙透 みふさんの魅力はその「気持ちの動き」という抽象的な表現のをギリギリ少女の顔を留めている範囲で落とし込んでいるところであると思います。
輪郭線をも排除し、大胆な絵具の重ねで少女の表情をアップで描いています。

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『うまく言えない』のアップ写真
絵具の流れと、重なりによる立体感も面白いです。
照明を当て、影ができるとより作品の魅力が出て素敵だなと設営しながら思っておりました。
輪郭を破壊するということで、「崩し」について注目することが多いのですが、今回の4作品にも当てはまりますが「目」の崩しは特にみています。

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最初の2枚については、これだけ輪郭もなく、崩した表現でも目として認識できることがちょっとした驚きです。
最近の作品は色のバリエーションを抑え、メインカラーの強さが増したように感じます。2019年10月に開催された個展の時のスタイルに比べ、より絵具の動きがダイナミックかつシンプルになり、よりインパクトな印象を与える絵になっています。
紙透 みふ作品のコンセプトは、例えば『うまく言えない』なら、自分の言葉の正しさを確信に変え、伝えられるものなら伝えたいという姿勢。『やがて薄れるのなら』は与え、受けた(心の)傷も時間と共に薄れるならそれでよかったのに(そうなってほしい)。『森の妖精』はやわらかくておいしそうな新緑に包まれたい、などそれぞれ「願い」を秘めています。そんなコンセプトも踏まえてご鑑賞いただければと思います。
そんな紙透 みふさんは今年8月、きのね2階にて個展開催予定ですので、そちらもお楽しみに!

かわさきしゅんいち

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昨年の8月の初個展『やせいのおしごと』から『おもにサメ展2』に出展、他にも大阪に戻ってくるたび何かと力になってもらっております、かわさきしゅんいち氏も今回常設展にご参加いただきました。(東京で活動している作家さんでこんなにきのねのお客さんと距離が近い作家さんもいないのではないかと思います)
かわさき作品といえば博物的なアプローチですが、今回も解説をいただいてますので、ここでも紹介します。

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ガストルニス
恐竜が滅びたすぐ後に栄えた恐鳥類という大型の鳥類。かつては当時の頂点捕食者といわれたが、近年は果実などを食べる植物食もしくは雑食者だったのではないかと言われている。旧学名のディアトリマという名前の方が馴染みのある人は多いかもしれない。(文:かわさきしゅんいち)
クチバシの質感が素敵です。顔のアップで迫力があります。
他の作品でも登場しますが、目の表現が素敵なのでアップ写真をあげておきます。

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生き生きしてます!

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ハイガシラオオコウモリ
果物を食べる大型のコウモリで、空を飛ぶ種子散布者として熱帯雨林を支えている。その顔つきから英語ではFrying foxとも呼ばれる。
(文:かわさきしゅんいち)
この作品は去年の初個展の際、在廊中に進めようと持参されていた作品で、まだ下書きの段階から見ていました。個展初日、制作を進めているかわさきの周りにたくさんのお客さんが集まり、早々にコウモリ講座が始まったことを覚えています。それからなんどか進捗を見せていただきつつ、ついに壁に掛かる時がきたかと、勝手に想い入れを感じてしまっている作品です。
この作品でも親と子で目の形がはっきりしているのですが、特に子供の目がこれまでの作品を観てきて「かわさき作品らしい」と感じています。

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角度もありますが、しっかり大人子供を描き分けています。
『ハイガシラオオコウモリ』の見所としましては、細かな毛の描写ももちろんですが、この翼のザラザラした質感、ただの点描ではない手の込み方も注目してみてください。

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かっこいいポイントだと思います。

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タコクラゲ
クラゲのような透明の深海タコ。目は望遠鏡のような筒形をしており光を効率的に集める。(文:かわさきしゅんいち)
ポストカードサイズの可愛らしい作品になっています。明るい暖色の額も相性がいいと思います。解説にもあるように、望遠鏡のような目が非常に目立ち、「なんだこの生き物は!?」と興味が唆られます。

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水彩の点描も非常に細かいですが、とても綺麗ですよね。
サイズにシルエットも相まって可愛らしい作品になっています。

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ダンクルオステウス
体長6mともいわれる、デボン紀初期の巨大な頂点捕食者、サメやエイに近い軟骨魚類で下半身はまだ化石が出ていない。共食いするほど凶暴な魚だが、デボン紀中期から現れたサメとの競争に敗れたともいわれている。
(文:かわさきしゅんいち)
かっこいいダンクルオステウスです!細かな点描が重量感を感じさせますね。タコクラゲと同サイズですがこちらはインクのみの作品になります。

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迫力は目力も一役かってますね。かっこいいですね!

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モーリシャスオウム
モーシャス島に化石として産出していたオウムだが、近世にスペイン人がモーシャス島に上陸した際のイラストにこの鳥らしきものが描かれており、近年まで生き残っていたことが判ったが、やはり既に絶滅している。
(文:かわさきしゅんいち)
毛や羽の重なりが本当に綺麗で素敵です。この作品、実は2019年8月に出版されました、雑誌BIRDERの「絶滅鳥類辞典」という特集で掲載された作品でして、そうして壁に飾ることがとても嬉しく思います。

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優しい目をしておりますね。

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しっかりした脚。

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翼の方がハイライトがしっかり入ってます。細かな線がかっこいいですね。
背景の着色はコーヒーでしょうか。茶の背景が鳥の色を際立たせています。

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カタゾウムシ
熱帯雨林に生息するゾウムシのなかま。非常にかたい殻をもち、消化に悪いため鳥もこれをたべることを倦厭する。種ごとに異なる美しい模様をもち、またその種の数が非常に多くコレクターも多い。
(文:かわさきしゅんいち)
去年辺りから新しい表現の試行錯誤として生まれたインクでの表現作品の内1点出展していただきました。
てんちょーも「カタゾウムシ」で画像調べましたが、本当に種類が多いです!どの種類も本当に綺麗でコレクターが多いのも頷けます。
そんな色鮮やかなカタゾウムシですが、黒のみで本体を描いています。
関節部分をあえて抜いた描き方が骨(化石)のように見えて面白いです。

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今回は入り口すぐのところに飾っています。
お客さんをお出迎えするポジションにいますね。

床下重工

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今回唯一の立体作品。
立体作品ではありますが、そのビジュアルを見せるのではなく写真にあります聴音棒から懐中時計のゼンマイが動く音を聞く、音の作品になります。

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懐中時計は普段床下重工氏が使っている私物です。

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懐中時計を一度アクリルの箱で密封し、聴音棒1本通す分だけ穴を開け、懐中時計に当てて音を拾います。
先ほども説明しましたが、ここで皆さんに聞いていただきたいものは懐中時計から鳴るゼンマイの音です。

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毎度回して起動させています。
そして、起動している間その音は常に出し続けているわけですが、日々生活している中でこうした「機械の音」に関心を寄せる人はそう居ないと思います。今こうしている間にも、冷蔵庫やPCだって冷却のためにファンが音を出しながら回っています。今あらゆる機械たちが私たち人間の生活を支えていますが、故障でもない限りあまりそのもの一つ一つに関心を寄せる機会は少ないのではないでしょうか。
そんな機械たちの声を聞こう。まるで人間を相手にしているような接し方が床下重工氏の機械との向き合い方で、作家としての魅力であると思っております。ぜひ会場で機械の声を聞いてみてください。

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ムスミメ

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最初にご紹介した紙透 みふ氏同様に人間の心情を描く抽象画作家です。
黒をメインとした作品が多く、ネガティブさが目立ちますが、グラフィックとしてのかっこよさ、デジタルも交えた面白さとお伝えできればと思います。
一番大きな作品『クレーター』は文字通り月のクレーターがモチーフです。
クレーターとはすなわち大きな穴で凹凸があるわけですが、光を当てることで光部分と影の部分が発生します。トリミングする場面によってその関係はどう感じるかというテーマで制作されました。

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複数の絵具、素材を使って異なった質感を演出しています。
月の表面のような全体的にボコボコとした表面を持つ作品です。
『汚染』と『残存』は立体感はなく、毒々しい絵具運びで表現されています。『残存』の方は少し金の輝きを出しています。

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今回特にご紹介したいのは唯一のデジタル作品の『不可視』です。

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デジタルで制作し、マットな黒アクリル板に出力されています。
「負の感情を持ち合わせながら表立って見せない抱え込む存在は、見えないが確かにある存在」と解説しています。無数にある線が痛々しく、冷たい表情を演出しています。他の作品と並べてもムスミメ氏らしい作品ではありますが、デジタルで試みる点がおもしろく、またマットなアクリル板の出力が黒の存在を特別にしています。絵具とも異なる細かな表現など、今後の作品にも期待が生まれる一点になったのではないでしょうか。

以上で一旦の紹介を終わりとさせていただきます。
細かな発信はTwitterやInstagramで発信していこうと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました!

本展示は引き続き5/31まで開催しております。
予約制でご来店のご希望も承っておりますので、お気軽にご連絡くださいませ。メール(kinone.cd@gmail.com)またはSNSのメッセージ機能でお問い合わせください。

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