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今週のkinologue【5/23-29】

そろそろ梅仕事を始めねば、とわかっているのだけど、たわわに実る庭の梅をとる余裕がないままだった今週、カンヌ映画祭のオンライン・スクリーニングを続けながら、来月から始まる学会シーズンの準備。とにかく目の前にある締め切りまでに原稿を書く。発表近くなったらまた改めて考える。と、ひとつずつ吟味していく時間がないことが本当にもったいない。何やってるんだか。色々と安請け合いしてしまった自分が悔やまれる。

結局、時間切れで見逃したり、リクエストしたもののまだ見ていなかったり、はっきりとした収穫なく終わったカンヌ映画祭。今回は買う・買わないはおいといて、色んな国の映画を観た。新卒の頃はフランス映画ばっかりやっていたので、当時活躍していたフランス人俳優にはそこそこ詳しかったのだが、久しぶりに観た彼らの様子がだいぶ変わっていて、時の流れを感じた(パトリス・シェロー作品でフェロモン系だったパスカル・グレゴリーが認知症のおじいさんになっていたのが一番の衝撃)。偶然だと思うが、70年代を描いた作品が重なった。50年くらい前のことは描きやすいものなのだろうか。発表された受賞作は地味めだったので、日本に流れるニュースは是枝ファミリーの受賞のみ。『ドライブ・マイ・カー』に続いて日本映画に勢いアリと書いている記事もあったが、日本の興行成績ランキングをみると、まるで別世界。コロナ禍以降、ますますドメスティック、アニメの傾向が強くなっている。邦画・洋画問わず、世界的に評価される作品を観るのは希少趣味な人たちだけ、、、というのはさみしすぎる。

こちらもメチャ高評価だったが、上映回数が減っていてギリ間に合った『カモン カモン』。マイク・ミルズのまなざしはいつも温かい。ジョーカーの直後にこの役を選んだホアキンもすごいが、オーディションで選ばれたジェシー役のウッディ・ノーマンが素晴らしい。最近多いモノクロ作品のひとつだが、モノクロなのに色彩豊かに感じた『ベルファスト』とは違って、色が必要ない気がした。それくらい「音」に気持ちがいく。兄と妹の関係も良かったなぁ。久しぶりに兄に会いたくなった。もう会えないけれど。

「大人も子供もどっちもどっち」、わからなくないけどイマイチ。A24オシがすごい。

マイク・ミルズ→ミランダ・ジュライ→岸本佐知子ということで、ずっと楽しみにしていたルシア・ベルリンの新刊『すべての月、すべての年』のオンライン・トークイベント。岸本さんの話が面白いのはもちろんだが、一緒に話した中島京子さんとのバランスも良かった。以前、柴田先生も同じようなことを言っていたが、知られていない新人作家の本を出すのは賭けのようなもの。「(翻訳するのが)楽しかったんです。短編の順番も殆どいじってないし、そのまま訳して十分素晴らしいと思った」稀有な作家だったとか。1冊目の『掃除婦のための手引き書』が売れた理由はわからないと言っていたが、「掃除婦」という言葉と全くアンバランスな煙草をもった作家本人のカバー写真のせいではないか(私はそこに引っかかった)。まだ全編を読めてないので、原稿の締め切りを無事に乗り越えたら読了して、トークイベントのアーカイブを見て噛み締めるのが、とりあえず当面の目標。がんばりましょ。

これもまたモノクロ写真の魅力かも。


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