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ヨーテボリ映画祭(スウェーデン)とDOCPOINT(フィンランド)。

Clubhouseが周囲を席巻するなか、空いた時間は全てオンラインでのヨーテボリ映画祭参加に注ぎ込んだ日々。それでも全てを観ることはできなかった。犯罪モノ、歴史モノ、ホラー系、SF系はkinologue的プライオリティーが低いので、どうしてもドラマやドキュメンタリーが中心になってくる。長編で観たものの中では、どちらもスウェーデン映画だったが、「本気の仕事」に直面したティーンエイジャーを描いた2本が良かった。
1本目は "Pleasure"。ポルノ女優となるためにスウェーデンからカリフォルニアにやってきた19歳女子。金髪のアングロサクソン的ビジュアルはウリになるが、それらしい自分の見せ方、ランクを上げる売り込み方、ライバルとの戦い、激しい撮影現場での突破力、、、自分を追い込みながら、全てを手探りでモノにしていく姿は本当に逞しい。pleasure(享楽)の裏にある苦しみや葛藤を、想像以上にポルノ業界を真面目に描いている。サンダンス他にも出ているようだけど、MUBIがエクスクルーシブで配信するみたい。こういう動きが加速してくるのだろう。

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もう1本は “Tigers”。サッカーに詳しくなくても聞いたことのあるイタリアの名門クラブ・インテルのユースに16歳で入った男子の実話。スウェーデン人には有名な話なのかもしれない。

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才能があることに加えて、ツルっとしたアングロサクソンな容姿はからかわれる対象。まだあどけない10代らしい葛藤がありながらも、ユースチームの熾烈な競争にも才能にまさる努力で打ち勝って、トップチームに呼ばれるまでに成長していくが・・・。サッカー少年の成長物語で終わらず、名門クラブチームの裏の顔を描いた映画は新たなトピックなのかもしれない。この作品が今年のDragon Awardの最優秀作品賞と俳優賞を受賞。日本では配給されるかなぁ。

業界向けなので、ポスプロ中作品のプレゼンも。監督やプロデューサーが色んなところからで撮影した動画が興味深い。雪が降り積もるヘルシンキ大聖堂からお届けしていた監督もいた。しかし、本当に監督もプロデューサーも女性が多い!北欧のアートフィルムマーケットの女性比率は体感40%くらい?気になった作品は2本。売り込みもされた1本目は、ゲイだけが集まった大学を舞台にしたスウェーデン映画 " The Schoolmaster Games "。プロモをちょっと観ただけでも、観たことのない世界観が広がっており、スリリングで面白そうだった。

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もう1本は、ノルウェーのブラックコメディ "Nothing to Laugh about"。癌になった40歳のスタンドアップコメディアンの話だが、プロモにあった会話のやりとりが好みだった。今回は他にもノルウェー映画を何本か観たが、正直肌に合わず。しかし、これは出来上がったら観てみたい。

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大体の作品がセールスエージェントがついており、厳選されている感があったヨーテボリ映画祭。カンヌ映画祭のオンラインシンポジウムでもやっていたNostradamusの業界シンポジウムも興味深く、レポートも後で読むつもり。『フレンチアルプスで起きたこと』(この邦題、いいよなぁ)や『ザ・スクエア』のリューベン・オストルンド監督はヨーテボリで育ったらしく、トークで飾らない人柄を感じた。しかしオンラインで2時間のトークは長い(笑)、寝落ちした。

そして、オンラインにつき業界登録が出来なかったフィンランドのドキュメンタリー映画祭、DOCPOINT。

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『365日のシンプルライフ』もプレミアはこの映画祭だった。こちらはヨーテボリ映画祭に比べると原石感があるので、宝探しの楽しみが(笑)。以前、ヘルシンキ映画祭でプレゼンを聞いた作品が完成していたので、本編を観せて貰うべく依頼するつもり。一番驚いたのは、FINNISH COMPETITIONの受賞作品 "DONNER - PRIVATE"。『ファブリックの女王』の監督、ヨールン・ドンネルのドキュメンタリーだ。

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作家で政治家で映画監督、そしてフィンランド人唯一のオスカー受賞者(プロデューサーとして)は日本で言えば、石原慎太郎みたいな感じ?で、誰もが知っている有名人。この写真の部屋もインタビューの時に訪問したよなぁ、そしてここにボールペン落としてきたんだよなぁと思い出したり。眼力が鋭い人だったのは、きっとこの映画からもひしひしと伝わってくるだろう。

次回はオンラインと言わず、リアルに参加したい気持ちがますます募った。

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