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ひとり出版者、再始動(3)→1年後

再始動(2)は「次回へつづく」で終わっており、つづきがまさか1年後になるとは自分でも呆れる(笑)。しかし(2)の最後に書いた「#02の発送作業地獄」は本当に地獄で、一度始めたらやり通す信条が揺らぎそうになるくらい、酷かった。(2)を書いた1年後の今日、また同じ作業をしていたので、#02を制作・販売したこの1年を振り返ってみることにする。

3種類の本の発売日を5/11に決め、その10-14日前に倉庫へ搬入するとネット書店も発売日から販売可能になるということで、連休前に出荷することになった。28日までに入庫ということは、27日に出荷。#02の本体とシールの納品は26日なので、出荷まで2日間しかない強行スケジュール。今日も風が強い1日だったが、確か1年前も風雨が激しくて、かるーくヘルプを打診した友人に「無理しなくていいよ」と強がって言ったのを思い出した。最初のつまずきはそこだったかもしれないが、本の納品がなぜか最初1箱30冊分くらいしか来なくて、他10箱が届いたのが夕方になったのは大きな誤算だった。とりあえず来た分で10冊単位のクラフト紙の裁断を始める。#01との20ページ差は大きく、10冊分は結構な高さになり、不器用ちゃんの私には包装がますます難しくなりそうな気配。やばいなぁ。暗雲が立ち込める中、やれることからやろうと、#01とDVDブックの梱包作業をに取り掛かった。ようやく夕方に納品され、#02の発送までの作業工程は以下の通り。②③が#01にはない作業で、この3つのシールが全て揃っていることを確認しながら行うことに神経を使った。
①取引代行TRANSVIEWシールを裏面に貼る
②表3に配信コードシールとその上にカバーシールを貼る
③初版特典シールを表紙に貼る
④スリップを半分に折る
⑤スリップに直ハンコを押す
⑥スリップを挟む
⑦クラフト紙を冊数のサイズに合わせて裁断する
⑧クラフト紙でキャラメル包装をする
⑨書名やISBN、冊数などを書いたシールを印刷して貼る
⑩パズルのように包装分を箱詰めと納品書封入、送り状記入
26日は⑥の作業まで終了したら力尽きた。ゆうパックの集荷は17時だから、⑦-⑩だったら何とかなる!と思って寝た。
27日はいよいよ出荷日。朝からずっと作業をしていたが、⑦⑧に相当手間取り、#02の梱包が終わらないのに14時をまわって焦る。とりあえず出荷できるように、箱詰めを先にやることにした。あと3時間!と思っていたら、ゆうパックの集荷が16時にやってきた。「17時に出直してほしい!出来るならもっと遅い方がありがたい!」とゴリ押しして、後で来て貰うことに(送り先が首都圏なので19時まで待ってくれた)。そこからも必死で裁断→包装→箱詰めをしたが全く終わらない、、、再度集荷が来たときには「送り状書くので、そこの箱にガムテープを貼って貰えますか?」と集荷のお兄さんに作業をお願いする始末。それでも「さすがにもう待てないですね」という時間になり、2箱分を諦めて後送することにした。まだ2箱分の作業が終わってなかったが、精魂尽き果ててグッタリ倒れ込んだ。

キャラメル包装、前回よりマシにはなったけど、まだまだダメ。

この日の自分を思い出すと、今でもオソロシイ。自分の不器用さと真剣にヘルプを頼まなかったことを呪った。そして1年経って、またやってきたクラフト紙の裁断とキャラメル包装。もはやトラウマとなっているくらい嫌い。今回は前回の反省を生かして、包装する前に元々納品されたときについていたクラフト紙の帯で10冊ずつまとめてみることにした。帯をパーンと切って捨てるのが気持ち良くてやっていたけど、帯でとめると想像以上にずれなくて、キャラメル包装に実に効果的だった。といっても、左右対称にピシッときれいに包装することは、ひとつも叶わなかった。うっすら隙間があるのをテープを貼って隠すしかない。「業者に頼んだ方がきれいですよ」と去年誰かに言われたが、業者に頼む段取りの時間と経費の問題を今年もクリアできず。ただ、前回のクラフト紙のロールをぴったり使い切れたのは、晴れ晴れと気持ちが良かった♪ そして今回はスリップはスルー。すみませんです。

再始動(2)の流れで、いきなり出荷までの作業の話から入ってしまったが、AFTER THE CINEMAシリーズ第2弾「『〈主婦〉の学校』AFTERBOOK」は、2021年10月から始まった劇場公開の約7ヶ月後に発売し、#01とは異なる歩みをしている。#01との大きな違いは「配信視聴ができる本」であること。物理的に配信視聴特典が可能とわかってから、地方の劇場上映予定との兼ね合いや動画配信サービスの開始タイミングなど、様々な調整が必要だった。それから、#01に続いて、小規模事業者持続化補助金<低感染リスク型>を申請。これが通常より金額が倍で3/4助成という願ったりな補助金で「配給会社主導の配信の新たな形」といった事業内容で申請した。2回目となると書類作成も時間がかからず、無事に申請が通った。実施期間は4/30まで、報告期限が5/10となったので、自ずとスケジュールが決まっていった。この作品で配給を決めたときから本をつくる構想はあったが、初の単独配給だったこともあって劇場公開が始まるまでとその後もモーレツに忙しく、具体的に本作りを動き始めたのは年が明けてからだった。

シリーズ第2弾なのでフォーマットは#01を踏襲。

全体の構成を考えながら、1月からオンラインや対面でインタビューを始めて原稿にまとめていった。映画のパンフレットからの流用原稿もいくつかあるが、全体の1/4程度。あとは全て新しい原稿だ。コラム以外は全て自分でインタビューをして原稿に起こした。映画編・教養編・理解編・実践編という4部構成に整理するまで時間がかかった。オールカラー100Pで盛りだくさん!

映画編を頭にもっていくかどうか、かなり悩んだ。7人のインタビューと座談会を実施。

テキストだけでなく、配信用の動画コンテンツ(日本版「主婦の学校」開講講座)を2本制作することにして、東京での劇場上映時に行ったダーニング講座(先生;野口光さん)を撮影して貰った。2本目の洗濯講座(先生:中村祐一さん)は2月に長野のスタジオまでお邪魔して撮影した。

コロナ禍のなか、リアルでの講座開催が何よりの喜び。野口さんが背中を押してくれた。
2月に撮影・取材に行った洗濯スタジオ@長野。整然と並ぶ洗濯機と洗剤。

補助金の実施期限が決まっていたのに動き始めたのが遅かったので、最後の「家庭科教員座談会」を実施できたのが3/21だった。本の原稿制作はもちろんだが、それと同時に書店から発注をしてもらうためのFAXDMや冊子の広告原稿も作成せねばならないし、DVDブックから独立させる#01の仕様を決めたり、#02の配信視聴用シールの検討などもあった。3月といえば確定申告もあり、ローカル劇場上映イベントなども並行していたこの頃は大混乱だったはずだが、「今週のkinologue」を見直してみると、意外と文化活動盛んで楽しげ。年度末で多忙なデザイナーさんに「レイアウトを組めるのは3/29から」と言われ、どんな心境で日々過ごしていたのか、全く覚えていない(笑)。入稿は4/15予定なので、100ページの本を2週間ちょっとで制作するスケジュール。でも「絶対大丈夫!」と言われ、#01でもお世話になり、校正者としてキャリアを重ねている友人にスケジュールを伝えてスタンバイ。そこから驚異的なスピードで制作し、4/14に無事入稿(予定より1日早い!)。一発勝負のネット印刷なので薄氷を履む気持ちで、オンラインで話しながらデザイナーさんと最後の校正をした。#01の時には印刷が上がってすぐに誤植を見つけて凹んだが、#02は見つからなかった(まだ見つけられていないだけかもしれないが)。

改めて見ると、こんな切り抜きの多いレイアウトを、時間のない中、よくやってくれたものだ。

出荷が終わって5/11に発売を迎えた。販売チャネルとしては、トランスビューを通じての書店・ネット書店、BASE上のオフィシャルショップ、イベント等での直販の3つ。発売から1年弱経ったところで計算してみると、補助金のおかげで収支はトントンだが、販売数は全体の半分ちょっと、取次通し分とそれ以外では2:1の割合。出版流通に乗せた方が売れるが、その分、経費が掛かる。出版点数を増やさないと、流通コストが割高なのを実感した。

左は販売終了(書店では在庫ありな可能性あり)、
右(ない!はもちろん書いてない)は5/10頃より書店でも販売(オンライン先行販売中)。

初版特典の配信視聴が今年4/30で配信終了。その半年くらい前から各動画配信サービスにての配信が始まり、特典としての旨味が薄れていた。特典がないまま1,900円で売り続けるのはいかがなものか、トランスビュー工藤さんに相談してみると「価格を変えた方がいいと思いますが、ISBNを付与しなおすことになりますし、コストをどう考えるかですよね」という返答。うーん、確かに。新しいISBN・書籍コードと価格が書かれたシールを貼る必要がある。変えたところで売れるかどうかはわからないが、変えなかったらこれ以上売れることは難しい、、、と結論づけ、価格を1,000円に変えて新刊として販売することになった。5/10頃から書店にて販売予定(オフィシャルショップでは先行販売中)。コロナ禍が落ち着き、今後は上映イベントを積極的にやっていきたいし、その時にテキストとしてAFTERBOOKを販売していきたい。AFTERBOOKがどうやって映画と寄り添っていけるか、まだまだこれからである。

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