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秋恋桃®を地域の新しいブランドに。桃山町の若手農家 宮村康平さん

「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければみんなで行け」
という言葉があります。
今回は、この言葉を体現されている紀の川市桃山町の若手桃農家、宮村康平さんに、桃の花が満開の時期にお話を伺いました。

300年以上続く桃の産地

和歌山県は桃の収穫量では全国5位。超がつくほど有名な桃の産地ではないけれど、春には「一目十万本」と言われている桃源郷では見渡す限りの桃の花畑を楽しむことができます。
和歌山県紀の川市にある「桃山町」は、300年以上続く歴史ある桃の産地として、桃の栽培・品種改良・販路開拓に取り組んできました。その伝統ある桃の産地で先代から受け継がれている桃作りを行いつつ、新しい取り組みへも積極的に挑戦を続けているのが宮村さんです。

組合のみんなと、遠くまで

宮村さんは「あら川第一桃生産組合」の組合員の一人。組合とは、26件の桃農家からなる組織で、生産から販売まで全て自分たち生産者で運営しています。
組合では2店舗の直売所で完熟桃を販売。生産から販売まで一貫して行うからこそ、食べ頃まで木に実らせた桃をお届けすることができるのです。
この組合の桃にはファンも多く、作業を始める早朝に直売所の前を通ると、既に並んで開店を待っている車もいるのだそう。シーズンにはいつも人で賑わう直売所を見ていると嬉しくなると宮村さんは話してくださいました。

5月中旬、桃が大きく育つよう実を間引く摘果作業中

まずは一人で挑戦

26件の農家が組織する組合での桃作りは「やり甲斐も大変さもあって面白い」と言います。組合のみんなと運営方法や販売計画を立て、機械の購入を検討するなどの「経営」をすることはとても楽しく、一人ではできないことに取り組めているそうです。
ですが、やりたい事や思っている事がすぐに実現できるわけではありません。例えば、組合で作っている桃は直売所で販売していますが、販売するのは生産者ではなく熟練の専任の人です。直売所等でお客様と直接話す機会が少ない宮村さんは、お客様の声を直接聞きたいし桃の魅力をもっと伝えたいと考えています。


秋恋桃®🍑

「お客さんの話を聞いて、桃の美味しい食べ方を伝えたい。そして、もっと長い期間桃を食べてもらいたい。」
通常の桃の販売が終わるお盆時期以降に収穫できる桃でそれに挑戦します。

今まさに育っている最中の、秋に収穫できる桃の木。

秋恋桃®は、暑い夏に「早く秋こいよ(きてほしい)な」と思ったことから名付けたそうです。ワクワク、ドキドキ、恋するような気持ちで食べてもらいたい、そんな想いもあります。桃といったら夏のイメージですが、秋恋桃®は夏が過ぎた頃に旬を迎える桃です。一般的にイメージする桃よりも日持ちが良く長い期間楽しんでもらえるのが特徴です。
※お盆以降に収穫できる極晩生の桃が秋恋桃®ブランドとして認定されています。

これまで組合や産地の皆さんと一緒に取り組んできた桃作りの知識と技術を活かし、宮村さんは秋にできる桃作りに挑戦されます。他の農作物を作るよりも、桃を極めた方が自分もやりやすいし、この挑戦がうまくいったときに組合や地域のみんなにもいいと考えています。秋恋桃®は自分だけのものではなく、地域のみんなで作る、地域の新しいブランドになることを目指しているからです。また、秋恋桃®が加わることで桃を作る期間が伸び、桃農家にとってはより収益が上がるようになります。

※秋恋桃®公式Instagram


地域に恩返しを

宮村さんが秋恋桃®を桃山町の新たなブランドに育てていきたいと考えているのには、「理屈ではなくとにかく地元が大好き」だから。と恥ずかしそうに笑って言いました。
遠くにいる誰かに美味しい桃を食べてもらって喜んでもらうことも大切だけれど、地元の人や生産者から愛され、そして「いい兄ちゃんやな」と言われる存在でいたいと。そして、もっと言うと、農家が子どもたちのあこがれの職業になる未来を夢見ているようです。子どもたちの目に映る農家の大人たちが「大変そうだけどかっこいい」。そんな風に思ってもらいたいと熱く話してくださいました。

あとがき

ここでは書ききれないほど宮村さんには桃作りへの想いを聞かせていただきました。そして、秋恋桃®以外にも様々な実験や挑戦をする真面目な姿に感銘を受けました。

データに基づく農業を

実験と挑戦の1つ、紀の川市4Hクラブのプロジェクトの一環として「環境モニタリング」に取り組んでいます。

環境モニタリングによって目指すことは、気温や雨量、湿度、そして土壌の温度や水分量などを計測、記録。そして、そのデータを蓄積することで感覚で行っていた農作業を、数値に基づいて実施することが可能になります。それが、高品質な桃をより多く生産することにも繋がります。

データと桃の状態を記録し、そのデータが貯まることで可能になるため、結果が出るまでには時間がかかります。

技術や知識を上げるのは当然。それに加えて、スマート農業技術も活用し、より高品質な桃をたくさん作りたい!と宮村さんは目を輝かせていました。

環境モニタリングの機械。この機械で降雨量は湿度などを測っています。


桃の木の栄養になる草(ナギナタガヤ)

こんな桃畑の足元、見たことない!これも全て真面目な桃作りへと繋がっています。(4月3日)

こちらの写真、木の周りだけ草が生えているこの光景も、1つの実験だそうです。通常、桃畑には全面に草が生えてきますが、こちらは土壌処理剤とナギナタガヤという草を活用し、木の周りだけ草が生えるようにしています。そしてこのナギナタガヤも計算に基づいて生やしているもので、5月中旬には倒れ、枯れた後には桃の木の養分になる物なんだとか。

倒れた状態の写真もいただきました!桃の木の役に立っている様子が健気で可愛い。(5月18日)

宮村さんがこれをするのは「草を刈る時間を桃の木の世話をする時間に充てたいから」と。
全ての時間を美味しい桃を作ることに使いたいという気持ちがひしひしと伝わってきました。

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