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ウェブストアスタッフが6月に読んだ本

こんにちは!ウェブストアスタッフのノラです。

私たちのオフィスのある東京は、6月はしばらく梅雨らしい天気が続いていましたが、7月に入った途端に真夏のようです。
連日、熱中症の話題も報じられており、外に出るのがちょっと怖いですね。冷房の効いた部屋で、ずっと本を読んでいたいなぁ…と思う今日この頃です。

それでは気を取り直して、今月もスタッフが読んだ本をご紹介していきましょう!


■ノラ

山尾悠子さんの初期ファンタジー作品の復刊とのことですが、私自身は初めて手に取る本でした。爽やかさを感じるタイトルと表紙の女の子に惹かれて、思わず買ってしまいました。

4つの連作短編が収録されており、そのすべてに「タキ氏」という謎めいた人物が登場します。いつも皺ひとつないダークスーツを身に着けてリムジンで移動する、やり手のビジネスマンといった様子のタキ氏。そのビジネスは「あの世」にいる顧客をひと晩だけ「この世」に連れ戻すというもの。
ファンタジックな設定ですが、本来交わることのない彼岸と此岸が交差するとき、そこには喜びや感動だけではなく、痛みや苦さ、軋轢なども生じます。
4つの物語には、それぞれ様々な立場の少女たちが登場します。彼女たちは初夏という季節に異界と出会い、どんな感情を抱くのでしょうか。
挿絵は酒井駒子さんが描かれています。少女たちの可愛らしさと同時に、ある種の頑なさのようなものも見えて、物語の奥行きが深まっているように感じました。

余談なのですが、唱歌の『夏は来ぬ』が好きでよく口ずさみます。花の香、鳥の声、五月雨の合間の涼やかな風、田植えの風景、五月闇の空気感…そんな季節に懐かしさと憧れをおぼえます。
気候変動の影響なのか、はたまた大人になったからなのか、ここ十数年は春が過ぎるとすぐにかんかん照りの夏に突入する印象があって、「初夏だなあ」と感じる機会が少ないのが寂しいのですが、この本で初夏を体験できたようで嬉しかったです。


●ミケ

この本は石に耽溺する世界中の人の逸話や、石そのものの伝承などを集めた一冊だ。
宮沢賢治からユングまで、古今東西多くの人々を魅了してきた存在・石――地球の記憶の欠片、大地の骨でありながらひとつの宇宙を内包する。私はそんな印象を抱いている。集めたり採掘したりするような領域には手を出していないものの、石に惹かれることはとてもよくわかる。

美しさと武骨さが同時に存在するその佇まい。奇妙な文様、幾何学の形。何かあると思わせてくれるには十分過ぎる神秘性。
石とは極めて科学的な物質でありながら、スピリチュアルと結びつきが強いのもうなずける。石とは身近な存在でありながら、そのすべてを把握している研究者も存在しないだろう。
なぜ人は石に惹かれ、その何処に魅入られるのか。伝承や逸話、そして現代の「石ぐるい」たちへの取材で紐解かれてゆく。
ただしそこに明確な理由などなく、本人たちにも「わからない」ことではあるのだが。

作中のモルダヴァイトについての「石も飛べば星に当たるのだ」という一文が印象的だ。地に転がるイメージの石も、隕石となれば宇宙空間を飛んでいる。
インドネシアの伝説であるバナナと石の言い争い――なんと人間の運命についての――もおもしろい。
石に不変と不死のイメージを見る人間は世界中にいた。

筑摩書房からかつて刊行された、『ミステリーストーン』という書籍の新装復刊となるこちら。
名著が手に取りやすくなったことに、心より感謝したい。


ということで、今回は2冊ご紹介いたしました。
2人とも、どこかひんやりとした空気を感じさせる本を選んでいたのが面白いな、と思いました。暑さの反動でしょうか…?

次回の記事が出る頃はもう8月、夏本番ですね!
夏が楽しくなるような本が読みたいなぁ、と思っているところなので、次回ご紹介できるかもしれません。どうぞお楽しみに☆