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成長で消えゆく、夢とキミ:無料公開「デジモン映画」感想(デジモンアドベンチャーラストエボリューション絆)

2024年8月25日正午まで映画「デジモンアドベンチャーラストエボリューション絆」が Youtube で無料公開しています

私は感動したので、デジモン世代は全員、急いで見て欲しいですね。ミルクボーイなら「こんなん何回見てもええもんですからね」と言う所です。

以下では、デジモン知らない人も映画を楽しむための紹介と、映画のネタバレなし感想を書きたいと思います。ちなみに私は、実は世代ではなく、以下の状況です。

  • 単位取得(DVD所有):デジモンアドベンチャー&ウォーゲーム(細田守監督)

  • 履修中:デジモンアドベンチャーを Youtube で子供と毎週視聴中(2024年8月現在24話まで)

  • 未履修:続編のトライ(tri)や02などは1話以外見ていない。

何も知らない人は、「デジモン≒ポケモン≒妖怪ウォッチ≒電脳コイル」と見て良いと思います。主人公達のペットとしてデジモン(デジタル世界の可愛いモンスター)がいて、現実世界の街を守るためデジモンと共にバトルする映画になります。

ただし昆虫採集的「ゲットだぜ」ではなく、たまごっち的育成の「よし進化だ!」なので、パートナーデジモンは一匹のみで、その一匹がピンチで進化し、バトル後は退化します。ヒーロー系の変身シークエンスは「一番美味しい所」ですが、これがデジモンの進化シークエンスに対応し、「可愛さ→強さへの変身」が男子を燃えさせ、「互いを守りたい気持ち(絆)」が大人にも響く仕組みです。もしも、あなたのペットがあなたのピンチを助けたら、感動するのと同じです。

「なんだ合体なしか」とがっかりされたロボット系マニアの方!無いわけないでしょ!!

本作は一人一匹ルールを破る「合体」進化もあって、この魅せ方は製作者の腕の見せ所です。そして細田守監督は天才的でした。同監督の夏映画「サマーウォーズ」をご存知の方も多いと思いますが、実はあの基本プロット・演出などは「デジモンぼくらのウォーゲーム」という40分映画の中に、むしろフレッシュに描ききっています。この細田イズムを、本映画もしっかり継承しており、皆さんもきっと「これサマーウォーズっぽいな」と分かる部分が本映画に多く見つかるはずです。

進化のトリガーは本作タイトルにもある「絆」ですが、合体進化では4者以上の間の絆に広がる。それを本映画はアニメで説明しています。タイトルの「最後の進化」(ラストエボリューション)も注目ポイントですね。

以上がデジモン作品の世界の説明で、その魅力を本映画は上手にアニメーションできており、田口智久監督には感謝です。

特に本映画では、子供だった主人公達は大人に成長していて、泣けます。例えて説明するなら、主人公達は「大人になったのび太」です。「のび太の結婚前夜」で、のび太がジャイアンたちと酒のんでいるのを見て、「こいつら大人になったな」と思うと涙腺刺激されませんか。本映画の落涙箇所は、ドラえもんを参考にしたかと思うほど、実に上手く機能しています。

ただのび太を知らないと泣けないように、デジモン初見の人は、主人公たち(タイチやヤマトたち)を知らないので泣けませんよね。だからもう一歩踏み込んで、何故大人のび太が泣けるのか?について、変わった趣向ですが、デジモン主題歌 Butter-Fly を土台に考えます。まず一度お聴き下さい。

作詞作曲は千綿偉功さんで、実は自分用の曲を提供しただけでデジモンありきではないそうです(リンク)。にもかかわらず歌詞には普遍性があり、この歌詞「無限大の夢」は、まさに主人公の子供(=のび太)の夢が無限大だと意味に思えます。大人が甲子園を目指せないように、「成長と引き換えに、無限大の夢はどんどん消えていく」。この意味で、子供時代の喪失は物悲しい。だから酒を飲むのび太を見て、少し物悲しいのです。蛇足ですが、逆にそれに抗うのが、ネバーランドのピーターパンですね。

また歌詞の「蝶になって会いに行く」は誰が誰に会うのか曖昧です。私は、タイチが女子のソラに会いに行く恋の歌と思っていました。ここで少し無理がありますが、あくまで仮に、ドラえもんが蝶になって、大人のび太に会いに行く、と考えて下さい。すると、この歌詞は逆に、大人のび太のそばにドラえもんはもういないのだという強烈な切なさを持つ。この切なさこそ、「のび太の結婚前夜」で私が大感動するポイントです。子守ロボのドラえもんはのび太を成長させるけど、教師や親がそうであるように、成長させると消える役目です。その成長は嬉し泣きになる。だから「結婚前夜」で、のび太のそばから自分が消えた様子を、普段どおりニコニコ見るドラえもんに感情移入し、代わりに泣いてしまう。

本映画でも、上述の「ボクが成長することで逆に消えていく、夢とキミ」が重要なモチーフとなります。ドラえもん、あるいは映画「インサイドヘッド」で言うイマジナリーフレンドの、その物悲しさや切なさを、本映画の中にも見出していただければ、デジモン知らなくとも感情移入出来ると思います。

最後に歌詞「無限大の夢(=子供時代)のあとの世の中」を生きるのが大人です。そこは「何もない」ように若い頃は思ってしまう。それを踏まえて、本映画のサブキャラ(ソラ)の前日譚(6分間)を見て下さい。

この前日譚を見ると、歌詞「愛しい想いも負けそう」は、女子(ソラ)とデジモン(ピヨモン)のお互いへの想いが、「何もない世の中」に負けそうになるという意味に思えます。歌詞「Stay しがちな〜翼」の stayは高度維持で、つまり飛翔能力の低い鶏などの翼を意味しますが、これが自立しようと奮闘したソラの現状を意味すると思えば、歌詞「きっと飛べるさ on my love」はソラに対するピヨモンの言葉に聞こえます。「私の愛の上で飛べ」って素敵な歌詞ですよね。

前日譚同様に、実は本映画も歌詞を強くなぞります。特にサビ前の「明日の、予定は、わか〜らない〜い〜」は、口ずさめるようになっておくとベストです。

他に、作詞作曲の千綿さんによる歌や、Youtuber なら恭チャンネルヴァンピコバソロ&七穂Raonなど多くカバーがあります。

本家歌手の和田光司さんは2016年に亡くなられましたが、皆に愛される良い歌です。その歌を深堀させてくれる映画にしてくれた、脚本大和屋暁さんには感謝ですね。

以上、紹介と感想でした。無料で出来る範囲の予習は十分なので、本映画をご覧ください。その次は、細田守監督デジモン作品がおすすめです。「こんなん何回見てもええもんですからね」

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