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一般ハイカーのための鎖場利用が懸垂下降習得の”隠れリスク”であった件
こんにちは。クライマーのKinnyです。
ちょっと仲間と山に行ってきました。
懸垂下降では、
(ロープにハーネスでぶら下がる)
という体の使い方をします。そこが安全の要となっています。
しかし、この体の使い方を習得するにあたって、鎖場での体の使い方をしていることが、障壁であるばかりか、
重大リスク
になることが分かりました。
懸垂下降をするときに、腕でぶら下がってはいけません。
髪の毛を巻き込むリスクがあります。
■ 一般登山道で出てくる、ロープや鎖場は、できれば使わず保険にしておく
おもいっきり、ロープや鎖を掴んで登っていると
ロープをみたら、腕で掴んでぶら下がる、
という
無意識の強化
になってしまうことに気が付きました。
■ 鎖場やロープでは、支点(つなぎ目)をよく見る
山の中に出ている、ロープや鎖は、あれば、
無意識
に使いたくなりますね。
しかし、
必要がないときはできるだけ使わない、
のが、より安全なことです。
なぜなら、そこは一般道なので、毎日何十人もの人が何度も使っている訳なので、一つの箇所に、かなりの力が、毎日かかっているということだからです。
ロープや鎖自体は強固でも、つなぎ目が強固か?
は別の話です。
■ 腕で引っ張る癖をつけてしまい、逆効果になっている
懸垂下降では、腰でぶら下がります。
その(腰でぶら下がる感覚)を習得するにあたっては、
(手でロープにぶら下がる=しがみつき)
が、逆にかなり大きなリスク要因となってしまいます。
腕でロープを引っ張ることを技術用語で、ゴボウ、といいます。
■ 手でロープにしがみつく=髪の毛を巻き込む
懸垂下降で、首から下げたアルパインネックレスや、女性の長い髪が巻き込みのリスクになることは良く知られています。
しかし、それは、胸の前の話。
今回は、そういう長い髪ではなく、短い髪…おでこの当たりの髪の毛を巻き込んでしまうヒヤリハットを経験しました。
理由は、(腕でロープにしがみついてしまったから)。
腕でロープにしがみつくと、体重とロープを連結している、ハーネスから体重が抜けてしまいます。つまり、自分の体重を、腕で支えていることになります。
これは、鎖場やロープがある箇所で、自分の全体重を自分の腕に預ける動きをしているからです。これは、ハイキングしかしない、一般登山道でも、よりリスクが高い行動になります。
前述のように、鎖やロープのつなぎ目に、頻繁に荷重がかかり、そこが壊れるリスクが非常に高い状態で、壊れる日は、ロシアンルーレット状態だからです。前の人が大丈夫でも、自分が大丈夫か?という確証はありません。
懸垂下降でロープに体重を預ける動作を習得する、ということに対しても、腕でロープを掴むというのは、マイナスの効果しかありません。
■ 3人に一人
今回は、ロープに体重を預けるということをできなかったのは、3名のうちの一人でした。どの方も若い男性です。つまり、山の世界では強者です。
こうした
(人工物に関する無意識の全信頼)
は、登山経験で作られている、という事例でした。
ということで、クライマー入門者に向けた、注意喚起です。
■ 山には老女も来る
私が今いるのは福岡ですが、福岡では、長野や宮崎とことなり、山岳後進県であるため、山がグレーディングされていません。
そのため、標高が低いから、近いから、というので、老女も含めた最弱者ハイキング客が、山を選別することなく訪れます。
つまり、4級の登山道(人によっては手を使って登らないと登れないとされるレベル)箇所が含まれる山にも、普通にみんなが来てしまいます。
そのため、30代の男性であれば、一般的に不必要、と思われる個所にも、ロープが出ています。
これが、逆効果になって、30代の壮年期男性にとっては、いらない箇所でもロープが出ていれば、見えたら、使ってしまいます。
このようにして、(ロープ=引っ張るの自動反応)が作られる結果、
(ロープに腰でぶら下がるべきところ)
を
(ロープに腕でぶら下がってしまう)
ということが起きています。ロープを使う場合に、腕にぶら下がるのは、ゴボウ登りと言われる技術の一つで、エイドクライミングの初歩です。
懸垂下降でゴボウしてしまうと、ロープと自分の頭の位置が近くなり、別に長い髪の毛でなくても、確保器と頭が近くなって、髪の毛の巻き込みのリスクが高くなります。
髪の毛の巻き込みは、そのまま降りることはできず、上からの引き上げが必要です。衝撃をかけて落ちてしまうと、頭皮の剥離になった事例も過去には挙げられています。
もちろん、今回は事なきを得ましたが、懸垂下降を習得するときに腕で体重を支えようという意識があると非常に危険だ、というヒヤリハット事例になりました。
老若男女、皆が山に来ることは素晴らしいことだと思いますが、鎖やロープの多用は、逆に、(若者が無条件にロープ=ゴボウの自動思考)をしてしまうリスクを増やしてしまいます。
支点には、十分に注意を向け、山にある人工物を無条件に信頼するのは辞めましょう。
山にある鎖やロープを保険として利用する方法については後述します。
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