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欠けたもの

夜永の秋。虫の音に、金木犀の甘い魅惑の香り。

夏は去り、心に少しばかり寂しさを感じる日々。

秋の夜永は、人を孤独にする。

何かが欠けていて、心に空虚さが募る。

幸せなはずなのに満たされない。

満たされるのが怖い。幸せになるのが怖い。

このどうしようもない感傷的な感情が何故か愛おしい。

秋はそんな私の憂いを救ってくれる気さえする。

私の感傷的な心が季節の空気に溶け込み、寂しさも切なさも、空虚さでさえ包み込んでくれる。

何故、秋の夜が私達を孤独にするのか___

どうしてこんなにも心に穴がぽっかり空いたように 切なくなるのだろう。

それは、きっと人は何かに満足すると それ以上を求めるからだ。

大好きな人と出逢えば 交際したいと思うし
付き合って長い年月を共に過ごして
居なくてはならない存在になれば
結婚したいと思うようになる。

然し、結婚すれば それが幸せの到着地点 という訳でも無い。

子供のいる暮らし 
2人きりでの幸せを創る人だっている。

それでもそれが 幸せの答えでは無い。

お互いを大切に思えなくなれば 
二人で作り上げたはずの幸せが いとも簡単に崩れゆくし、自分がどれだけ幸せだと思っていても 
相手が幸せでなければ ずっと心に穴が空いたような感覚に陥る。


やはり、人間は 満たされない方がいい。
少しかけていて 空虚感を抱く方が ほんの少しの幸せがより眩しく愛おしく思える。

大切なものを ずっと大切に思える。

人生は ちょっぴり 足りないなぁ。
くらいがちょうどいい。

人生という名の大きな樽に、ほんの少しの恵みの水。

「足りないなぁ。 足りないから 満たされないから、貴方と一緒にこの心の寂しさを分け合っていこう。寂しささえ、愛していこう。」

そんな関係が 1番大切なもので
そんな関係を紡ぐために 人と出逢うわけで。

でも昨今は、いつも大切なものが足りなくて
人との繋がりさえも 遠くて 儚い。

互いの心の寂しさや憂いすら 感じられない、そればかりか 鋭く尖った 温もりもない言葉で 知らぬ間に人を傷つける 世の中になった。

足りないものを 護りあって 
優しい言葉で 温かい関係を紡いでほしい。

どうか 人々の心に冬が来ないように。

満たされない 寂しさに呑まれてしまわぬように。

優しい世であってほしい。

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