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井出洋介語る16 Mリーグ隆盛の今、改めて問いたい「麻雀プロとは何か」

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「自分さえ売れたらいい」と思ったことはない

これまでお話したことを改めて振り返ってみると、僕はほんとうに「麻雀プロ」としての仕事に恵まれていたと思う。

自分が麻雀を愛し、競技麻雀を愛し、それを世の中に広めていこうと真剣に考えて行動していたら、自然と色々なところから声がかかった。

僕は自分が正しくないと思うことはやりたくない。だから自分がやりたいこと、やりたくないことをはっきり口にして、ほぼその通りに行動してきた。色々な場面で人と衝突したこともあったけれど、これまで大きくスタンスを変えないで生きてこられたことは幸せだと思う。

ここまで歩いてきた僕の前に道はなく、あったとしても舗装されていないデコボコ道だった。

「麻雀プロ」として企業がスポンサーになってくれたこと、ゲームソフトの監修をしたこと、地上波のテレビ番組で半裸で麻雀を打ったこと、芸能人同士の麻雀を真剣に解説したこと……。

どれもほとんど前例のないことを、僕は経験することができた。そしてその話はいつも、向こうからやってきた。僕は、提案されたことを受け止めて真剣に考え、麻雀を世の中に広めるために必死でやってきたと思う。

停滞することが好きではなく、いつも何か新しいことをやりたいと思っている僕は、喜んでいろいろな仕事に取り組んだ。

結果として、僕の知名度は上がり、ある時代は「麻雀の第一人者」としての立場を経験した。ただ、人を育てるという面では少し違ったようだ。決して「自分が中心でいたい」とは思ったわけではなかったのだが。

僕は「自分さえ売れたらいい」などとは一度も思ったことがない。僕以外の麻雀プロも食える世界になってほしいと思っていたし、今でも思っている。

Mリーグができて、麻雀で食えるプロの数は増えただろう。でも、今あるパイをみんなで取り合っているだけではいけない。パイを広げる努力をしなくてはいけない。

そういう意味で、今の「麻雀プロ」のありかたについては決して納得しているわけではない。

一般の勤め人が麻雀プロになる必要があるのか?

僕が疑問に思うのは、麻雀プロになる時点で、麻雀のいろいろな力が足りていない人が多すぎることだ。

プロという肩書がついている以上、他の世界の人たちから見てリスペクトされる存在であってほしい。でも現実には、とりあえずプロテストを受けて合格して「麻雀プロ」の仲間入りをしてから勉強をしていこうというスタンスの人が多いのではないだろうか? 「プロ団体に入ってから一生懸命勉強します」ではおかしいと思う。

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