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第二回近畿APD講演会(講師:阪本浩一先生)2020/10/05 100人参加 (前半)

開催日時:2020/10/05 13~16時
開催場所:ZOOM(オンライン)
参加人数:最大同時接続人数100人(ちょうどでした!)
講師:阪本浩一先生 (大阪市立大学耳鼻科准教授)

COVID-19の影響下で人が物理的に集まる企画はどうしても進めにくい状況ですが、それでも毎月APD(聴覚情報処理障害)当事者の集まりを持っているうちに
「専門家の話を聞く機会が欲しい」という声が毎回のように上がるようになってきました。

そこで、日ごろから大変お世話になっている、大阪市立大学の阪本先生にお願いして、オンラインの講演を行って頂きました。
快く引き受けて下さり、当日も豊富なスライドと噛み砕いた表現で、つい最近APDを知った人にも分かるように講演をして下さいました、阪本先生には、改めて心から感謝しております。

・テーマ
「聴覚情報処理障害の臨床 
~より良い診断と対応を目指して 大阪市立大学耳鼻科の現状と未来~」

内容としては
・難聴とは何か
・APDとは何か
・子供にAPDが与える影響
の三部構成でした。

この講演のレポートで初めてAPDについて触れる方もおられると思うので、講演の中で出た話題の中でも、基本的な点を可能な限り分かりやすく書きたいと思います。
書いている内容は必ずしも時系列に沿っていません。

「日本におけるAPDの歴史」
・欧米ではAPDに関する関心が高まってきているが、日本では未だにそれが低い
・日本で取り組まれ始めたのはここ五年ほど、その入り口は子供の難聴の分野の研究からだった
「聴力検査をしてみて聴力には何の問題もないのに、聞き取りに困難さを抱える子供がいる」というのが入口
そこから海外でのAPDの研究が日本で紹介され、今に至る。

「聞こえる」とは
「聞こえ」というのは非常に広い範囲が関わっている
外耳、中耳、内耳、聴神経、脳全体
そしてそれぞれの範囲毎に問題が生じることで
伝音性難聴、感音性難聴、後迷路性難聴 一側性難聴 機能性難聴etc
といった難聴が生じます。
APDは「聞こえ」の問題ですので、聴力に異常がなくてもれっきとした
「聴覚障害」と言えます。

また、この間で
「聴力検査とは?」「障害認定の基準」「スピーチバナナ」の話等がありました。

「APDと発達障害」
小渕先生の本でも出てくる、APDと診断された方の背景要因の内訳のグラフの話が出てきます。
知らない方の為にその内訳を書くと
・発達障害 55%
・認知的な偏り 31%
・心理的な問題 8%
・その他 3%
・問題なし 3%

やはりこの中で、大きなウェイトを占める発達障害への理解がAPDを理解する上では欠かす事の出来ないものです。
発達障害に関しては現在も研究がどんどん進んでいますが、APDにとって関係が深いのは「ワーキングメモリ―(以下WM)」の問題で、ここが弱いと検査で分かる人が多い。
WMは判断や思考に関わり、言語野とも関係がある。

今、大阪市大のチームではAPDとLDの関係に対して注目しており、APD疑いの方全員にWISCやWAIS-Ⅲを行っているが、この面で凸凹が大きい事が分かるAPD疑いの方が多い。
LDは「知的な障害はないが、聞く話す読む書く、のどれかで障害がある」というもの
読みの問題は近年ディスレクシアが有名になってよく「読めないんです」と仰る親御さんがおられるが、読みと書きというのはセット
音韻処理の困難さがある人もこれも多い。
(音韻処理を分かりやすく表現すると 「りんご」という声を聞いて「り ん ご」という文字が並んでいると分かるという事」)

ここまで第一部

第二部

「APDとは」
日本では今、APDに関して統一した診断基準はなく各施設で独自の方法で診断しているが、アメリカやイギリスではそれぞれ違う基準ではあるものの判断基準がある。
ただ、それぞれが基準の意味合いが違って、支援重視だったり発達障害を除外して厳密な判断を重視したりとまちまち
日本は今現在、経験を集約して日本の指針を作ろうとしている。

また、阪本先生は機能性難聴とAPDが連続しているんじゃないか、と考えていて、これを重要なテーマと考えている。

・子供のAPD
小児でAPDの受診のきっかけは「獲得語彙が少ない事」に気付いた時が多い
受診する子供の中でAPDに見える子供は全体の4%、そのうちでAPDだと判断されるのは0.1%程度、残りはAD/HDから来るものではないかと考えている。

・大人のAPD
大人で、聞き取りの困難を抱えて病院に来る人は、何とかして
「症状をはっきり形にしたい」と思っている
それに対して検査等を通して医学的に原因に近いところまでアプローチして、症状に形を与えて、可能な対応、受けられる補助なんかにつなげていきたいと思って診断している。
また、診断書も基本的な検査を優先で行った上でできるだけ早く合理的配慮を求められるように出すようにしている。

・APDの具体的検査
純音聴力検査、語音聴力検査、チェックリスト、ABR,OAE,ASSR,WAIS,分離聴検査、早口検査、雑音下聞き取り検査等
細かい内容は割愛しますが多様な検査を行う事によって、その患者さんの聞こえにが受けている影響を分離して、形を与える事が目的。

・APDとASD(自閉スペクトラム症)他
APDの診断が出る人の中には感覚過敏の方が多い
ASDの方には聴覚過敏の方も多く、選択的聴取が苦手
また、SDS(うつの指標)となる数値や、STAI(不安の指標)が高い人も多い
それらは心理的な問題なので改善が可能で、心理的問題が改善するに伴って聞こえも少し改善したと言われる方もいる。


この後に、検査結果のデータとその内容、傾向の分析をお聞きしたんですが、これはデータとかグラフがないと私の説明力が足りなくて書きようがないです。
個人的にはめっちゃ面白かったです。


この後第三部に続きます。

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