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第二回近畿APD講演会(講師:阪本浩一先生)2020/10/05 100人参加 (後半)

開催日時:2020/10/05 13~16時
開催場所:ZOOM(オンライン)
参加人数:最大同時接続人数100人
講師:阪本浩一先生 (大阪市立大学耳鼻科准教授)

前半はこちら
第三部
「子供にAPDが与える影響」

子どもの言語面での発達は、母音が大体3歳ごろ、そこから順に発達していって6.7歳ごろに発音が完成する。
それが遅れる場合、先ず難聴を鑑別しないといけない
ただ、APDがあると当然聞き取れていないので発音にも影響が出てくる。
発音の障害は一年から一年半ほどで直るので、これが直らない人の一部にAPDの人がいるのかもしれないと考えている。

また、過去の六人のAPDが疑われたお子さんのデータでも
全員純音聴力検査は高スコアであるものの、WMのスコアが低くWISCでは識別と記憶が比較的悪いお子さんが多かった。
また、読み書きに苦手意識を持っている人が多く、LDの傾向があるお子さんもいた。
発音面でもなかなか直らないまま、歪みが取れないで苦労したお子さんもいた。
分離聴検査等でも結果が悪いケースもみられたことから、発音の面での発達が遅れているお子さんの中には、APDのお子さんが隠れている可能性がある。

子どもの発音の問題でも、「APDかもしれない」という視点があれば、ロジャーシステムなどの聞き取り補助器具を使うことで軽減できるかもしれない。

この後、フォナック社のロジャーシステムの紹介が入りましたが、割愛します。
気になる方はコチラからメーカーのHPを見て頂くのが分かりやすいと思います。

質疑応答
注)特異性が高そうな質問は載せてません、個人特定に繋がるのを避ける為

Q1
Q「APDで聞こえの補助器具への補助金は出るのか」
A「自治体がOKすれば出る、全国的に中程度の難聴への補助金が出ている。学校であれば教育委員会がロジャーの親機は持っていて、子機だけを家庭が購入すれば使える事もある、判断基準は自治体によって違う。」

Q2
Q「コールセンターで働いているが、聞き取りにくい時があり、定期健診の聴覚検査では問題がない、大阪に住んでいるので先生の所で診て頂きたいが、直接予約を取れるのか?」
A「大学病院なので、先ず耳鼻科で聴力検査を受けて、紹介状を書いてもらう必要がある。お尋ねしたいのは、いつ頃から聞き取りの困難さを感じましたか?」
A(Q者)「小学二年生まで日本語が話せず、三年生からやっと話せるように、言葉自体が出てきていなかった」
A「APDによる発音への影響があった可能性はあるかもしれない、お待ちしてますので耳鼻科で紹介状をもらって来て下さい」

Q3
Q「軽度難聴もあるが、同時にAPDの可能性もあるのか、オージオグラムは臼型です、加齢で高音が少し落ちてきています」
A「落ちてるところがどれ位ですか?(Q者 「50~40」)
一つの方法としては、脳波の聴覚検査もしてみる手もある、もしかしたら遺伝性難聴の可能性もあるので、遺伝子検査をするのも一つの手、その辺をしっかりした後でないとAPDかどうかは分からない」

Q4
Q「APDの検査で性差はあるか」
A「現時点では女性のほうが多い、ただ今後その差は縮まってくるのではないかと思っている」
Q「非薬物療法というか、早期からのリハビリ、機能訓練で改善するのか」
A「どういう訓練をするかというのは非常に難しく、さらに早期発見も難しい。
ただ、言葉の遅れが出てきたお子さんになかなか成果が出ない場合、聞き取りに対する介入を、例えばさっき出たロジャーシステムみたいなものを使ってするのと全くしないで放置するのとでは全然違う。
また、聞き取りに対する心理的な影響もあるので、一人一人対応は違うが早期介入は絶対必要だと思う」

Q5
Q「福祉施設で難聴者の支援をしていて、最近APDの問い合わせが来るので勉強したいと思った。
APDは果たしてどこに分類されるのかいいのか?
発達障害の支援をされているところのほうがより効果的な支援ができるんじゃないのか、APDは聴覚障害なのか、別のものなのかと疑問を感じる」
A「それはすごく重要な問題、公的な施設で支援を受けようとするとそこが問題になる。
逆にAPDの人にどういう支援が必要か、という視点になるとこれは聴覚障害と考えている人が多い。
欧米の診断基準だと、そもそも発達障害を除外している国もある、なので聴覚障害になる。」
Q「ただ、対人援助として考えると、私達が普段接する中高度の難聴の方と、APDの方に接する印象がかなり違う、今日この場のような話をこの形で難聴者が理解できるかというと、それは難しい。文字が入らないと絶対に理解できない。
APDの方が大勢おられて困っておられるのは分かるが、難聴の方と比べると対応で戸惑う」
A「それも個人個人によると思う、かなり重いAPDの症状の方もおられれば、割と軽い方もおられる」

Q6
Q「小さい頃から聞き返しは多かったが、四年前にメニエールを発病して三年前にうつを経験したが、今も疲れてくると雑音下でTVや子供の声が聞き取りにくい、APDの症状と思われるか」
A「メニエールがまずちゃんと治っているかが重要、経過が長い人は聴き取りが悪くなるのは教科書でも書かれているぐらいの症状なので、大きな病院でしっかりとまずそこを調べて、その上で聞き取りが難聴の程度と比べて非常に悪いとかなら、APDの可能性もある」

Q7
Q「以前APDについて東京のクリニックで調べてもらうと、AD/HDの傾向が強くてWMが高くて処理が低かった、そのような例もあるのか」
A「その例もある、WMが低い人は大体4割ぐらい、それ以外で処理速度が遅い人も結構いる。
AD/HDが大きくてAPDの症状が出ているタイプなのかもしれない」

以上


若干の延長も含めて、三時間半にも及ぶ長時間の講演でしたが、参加された皆様とても真剣に取り組んでおられました。
それぞれが大なり小なりの聞き取りの困難さ、私の段取りのマズさなどで気が散らされる事もある中、ご自分の人生をより豊かにするために懸命に聞いておられる姿は画面越しにも伝わってきておりました。

また医療者の方、福祉や教育の分野の先生方も何人か参加して下さっていた事を事前にお伺いしております。
さらに、当日のスタッフとして快く日曜日の貴重な時間を提供して下さいました皆様にも心から感謝しております。
阪本先生はもとより、大阪市立大学附属病院の耳鼻科スタッフの皆様、また日本各地でAPDの患者に寄り添い、一人一人を尊厳ある一人の人として受け止め
その方々が今まで抱えてきた傷に寄り添うように、医療者としての務めを果たしておられる、各地の先生方にもこの場を借りて心からの感謝と尊敬の念を表したいと思います。

また、拙いレポートではありますが、この講演の記録がAPD(聴覚情報処理障害)の方の人生を、少しでもより良くする手がかりを提供するものとなれば幸いです。

近畿APD当事者会 渡邉 歓忠
連絡先:ewiglichschnee@gmail.com

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