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稲作創話「棚田物語」00 はじめに

書き始めるに当たって
皆さん、こんにちは。
 これから、この場をお借りして、目途、1年間、「稲作神話」ならぬ「稲作創話(挿話でもなく)『棚田物語』を書かせていただこうと目論んでいます。
そこで、もうお分かりのように宮澤賢治が念頭にあります。四国の田舎の谷あいで(とくれば、大江健三郎の「森」も念頭にあります)自然農法(無肥料、無農薬、無投入で、日、水、土の力でお米やお野菜、果樹を育てる農法)を、高校の国語の教員をしながら20年以上しています。そんな中で生まれてきた幾多のお話をまとめたいと考えて、取り組んだのがこの『棚田物語』です。
 ですので、内容は多岐にわたりますが、一応の括りを作ろうとすれば、以下のようになるのではないかと、今のところ考えています。実のところどうなるかは、その時の気分次第、お任せならぬ「出任せ」です。
 
甲類 「自然農法週末稲作物語」
 20年間培った「無肥料、無農薬、無投入米」を、週末の作業だけで作り上げることができる具体的な方法を紹介します。しかも、こんな棚田です。

今作っているのは、全部で14枚、4反ほどですが、この春からは親父が作っていて従弟に数年前から貸していた4枚7畝が加わります。田から田への機械の移動が命懸けですので、従弟は諦めましたし、実際、親父はトラクターでウイリーして、コンバインを下の小径落としました!)
品種は、農林100号「コシヒカリ」です。この品種が今一番日本全国で作られているようですが、ものの本によ  ると、数奇な運命の下に作られ残された品種で、しかも改良番号が100番、百(もも・桃)というのも、気に入っています。一回、このコシヒカリの母親?である農林22号に乗り換えたこともありますが、それはまたのお話に。
 
乙類 「農機具相性騒動顚末記」
 稲作に使う農機具(田植え機、草刈り機、運搬機、耕耘機、トラクター、コンバイン、バインダー、等々)を使う上での要領や使用上の注意点などを、実体験とともにお話します。なるべく機械に頼らない、つまり、石油燃料を使わないお米つくりをしたいのですが、今のところどうしても、ガソリン、軽油、灯油(乾燥機)を買っています。
 また、田摺り(八反摺り)、ころがし、唐箕(とうみ)、足踏み脱穀機などの燃料を使わない道具も使っていますので、こちらの道具についても、語りたいと思います。

丙類 「棚田の生き物語」
 棚田では様々の生き物(イノシシ、ヘビ、モグラ、タヌキ、イモリ、カエル、オタマジャクシ、ゲンゴロウ、等々)が暮らしています。ですからこの棚田でお米つくりをする以上は、どうしても、それぞれのお立場からもの申してもらいたいと思っています。実際、物語りたいことはどうもたくさんあるようで、その声をお取次ぎいたします。
 特にイノシシとヤマカガシは、強い思い入れがあるようなので、彼らの気分を害しないようにいたします。祟るというわけではないと思いますが、こじらすと厄介なようなので。
 
丁類 「日本酒造物語」
 この完全自然農法で作ったお米「コシヒカリ」でお酒を造ったお話です。まだ正式には市場に出ていませんので、その名も伏せざるを得ませんが、フランスで2021年開催された「グラマスター21 純米吟醸部門」で、プラチナ賞を受賞したお酒です。そのPRを兼ねて、誕生までを振り返った物語を提供します。
が、ここでの目的はもう一つあります。
何と、この棚田の谷では、天保三年(1832年)に、近藤是衡(これのり)という大農家が清酒の製造販売を始めていたのです。「朝みどり」と「根引松(ねびきまつ)」の2種類で、とても評判がよく、近藤家は大繁盛したそうです。その是衡を継いだのが、跡取り養子として分家からもらわれてきていた林内で、20歳の若さで近藤家の7代目当主となり、益々、発展し、国や県への寄付や寺社への献金なども多額にされ、多くの人から敬われ、親しまれたそうで、この方の話もしたいのです。
そして、更に明治になってこの近藤家に泊まって、先述の白猪之滝、唐岬之滝を観瀑に来た二人の文人、正岡子規と夏目漱石の話もしたいのです。

戊類「子規・極堂・漱石 白猪唐岬観瀑物語」
 子規が、明治24年(1881年)8月に、極堂が、4年後の明治28年(1885年)10月に、観瀑する。そして、子規から勧められが漱石は、上京する子規を28年10月19日に見送った(愚陀仏庵での共同生活の終わり)のち、同年11月2日近藤家に1泊して翌3日に二瀑布に詣でた。
その夜、漱石は「駄句数十」作り、東京の子規に送っていて、子規の添削した返事も残っている。
 これらの経緯は、故高須賀康夫氏が丁寧にまとめられて『のぼさんの道 子規・極堂・漱石の観瀑と近藤家』(令和2年7月13日 愛媛新聞SS)として出版されていますので、この本に寄りかかりながら、わたしも地元民としてこれらの滝にも、漱石にも、子規にも思い入れはあるので、幼少期の記憶と共に「物語」として書き残してみたいと思います。
 
 以上が、稲作創話『棚田物語』の概要です。
 一話1300字程度の読み切りで提供させていただきますので、どうぞ、末永くお付き合いくださいませ。
 

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