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夜明けのすべて

限りなく優しいパステル色のモザイク画

時々映画が終わると、感想を話し合う声が聞こえることがあります。
途中ねちゃった・・、とかぼそぼそ言ってて何言ってるかわからない、とか、この映画つまりは何だったの?とか。。
なるほど。人の数だけ感想があるのかもしれない。いや、同じ感想の人は究極いないのだけれど。

山添くんと、藤沢さん、それぞれが発作?を起こしてしまうシーンでは少し緊張感が走りますが、確かに大きな事件も起こりません。いや、私的には極日常に、誰にでもあるのでは?という小さな事件?はストーリーの中で味わっていました。
全編とにかく静かに時間が流れる。BGMでずっと流れているピアノ曲が静かな時を一層表現しています。 自分が周囲にどう思われるかをいつも気にしてしまう、そんなところをネガティブに思っている藤沢さん。でもそんな彼女の気遣いが山添君を静かに、変えていく。 自分が自分でどうしようもできない、それ故にさらに思い通りに生きられない、という非常につらい状況にいながら、それでも周囲の理解を得てなんとか毎日生きていく。この二人のようにはっきりと病名のつくものを抱えているわけじゃなくても、時々日々を過ごすのがしんどくなってしまう自分にとっては胸に迫るものがありました。
周囲の人々も藤沢さんと山添君を温かく見守ってくれる。栗田化学の社長と、山添君の前職の先輩?辻本さん、二人にも辛い過去があり、それゆえ人一倍彼らの事を親身になって考えていたんだな、と。終盤、山添君が前向きになっているのがわかり心から安堵した辻本さんの涙は本当に泣けました。

正直、こんなにやさしさだけに溢れた世界なんて、ない。ある意味ファンタジーだと思う。それでも、この静かな流れと温かい人々の眼差し、日々生きづらさや焦りを持っていても大袈裟じゃなく毎日をとつとつ、と過ごしていく姿、に感動を止められない。
「3回に1回くらいなら助けてあげられる。見ていたら何となくわかるから」そんな優しい言葉をかけてくれる人や、自分の痛みや困難を抱えながらそれを通して近くの人を大事にしていこうとすることの大切さ、尊さ。そこに老若男女の線引きは当てはまらない。静かな感動は今もまだ、余韻が残っている。深く温かい作品でした。 「そして、バトンは渡された」も同じ空気感だったので、原作の作風が強く出されているのかもしれません。原作があっても読まないで映画を観たい方なので、、まだ読んでませんが、本も読みたい!
余談ですが、「ぼそぼそ」いってる感じのセリフ、本当に普通の会話感がでててよかったと思います。



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