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「恐ろしい「補助金」のカラクリ…5000万円申請して絶句の事態」

2021/04/23


TONOZUKAです。


恐ろしい「補助金」のカラクリ…5000万円申請して絶句の事態



以下引用

「補助金で成長してはいけない」がんじがらめの歪さ

グループ補助金の特徴について論じてみたい。それは、グループ補助金が災害からの復旧資金である、ということだ。

 

「そんなことは当たり前だろう。言うまでもないことだ」と思われるだろうが、実はこの「復旧」が大問題になったのだ。
グループ補助金は、東日本大震災による津波で流出、損壊した施設、設備の復旧資金であるが、この「復旧」とは「震災前の状態に戻す」ということなのだ。

 

例えば、震災前に木造であった店舗を建て替える際に、今度は災害に耐えられるよう鉄筋コンクリートにするというのは認められず、また木造にしなければならない。建築面積が増えることも認められない。もちろん、鉄筋コンクリートにして従前よりも広い建物を再建することはできるが、「その場合は補助金は出ません。自己資金でやってください」というわけだ。

 

ある企業が、明治時代につくられたという石造りの貯蔵庫を震災前まで使用していた。それが津波で流失し、グループ補助金で復旧することが認められた。

 

「復旧」は厳格に運用されているので当然、震災前の構造、すなわち石で貯蔵庫を再建しなければならない。ところが、複数の建設会社に問い合わせてみたが、材料の入手も技術的にも元通りにするのはかなり難しいと言われ、石造りで再建すると膨大な費用がかかることがわかった。

 

そこでやむをえず、コンクリートブロックで再建することが承認された。これは例外中の例外で、施設の場合はグレードアップかどうかの判断に迷うケースはほとんどない。

 

「グレードアップ」という場合は普通は質的なもの、例えば性能の向上などを指すが、グループ補助金では量的なものも、例えば施設の建築面積が従前の面積を上回った場合などもグレードアップと呼んでいるようだ。

 

グレードアップが問題になるのは、施設よりも設備である。津波で流出してしまったトラックを復旧するケースについて考えてみよう。

 

流出したトラックは3トン車だったが、今度は補助金で5トン車を購入したい。これは明らかにグレードアップであるから不可。これはわかりやすい。

 

では、流出した10トントラック1台にかえて5トントラック2台にするというのはどうか。購入価格はどちらも同じとする。これも認められない。費用は同じであっても震災前は1台だったのが2台になることは認められないのだ。


F社の事例「5000万円分だけを補助対象」の依頼が…

ある水産物加工会社の例。F社としておく。

 

F社が使用していた生産ラインは旧式のもので、最新のラインを導入している同業他社にたちうちできないこと、修理費などの維持費用もかさむ一方であることから、ラインの入れ替えを計画した。具体的な機種のしぼりこみまで進行したころで、入れ替え予定のラインは震災による津波で全壊してしまった。

 

そこで、震災前に予定していたとおりの最新式のラインを導入しようとしたが、グレードアップであるからと認められなかった。F社は、最新式のラインと旧式のラインの導入費用の差額は自己負担とするので、旧式のラインを復旧したものとして、その価額を補助対象として認めてほしいと要望した。

 

つまり、こういうことである。再度旧式のラインを導入すれば5000万円かかるが、補助対象経費として認定される。最新式のラインを導入するには8000万円かかるがグレードアップなので補助金は出ない。しかし、どうしても最新式のラインが必要である。差額の3000万円は自己負担とするので、旧式のラインの5000万円分だけを補助対象としてほしい、と要望したのだ。

 

このF社の要望は認められなかった。いくら差額は自己負担するといってもグレードアップであれば補助金は1円も出ないのだ。「震災前の姿に戻す」というのがグループ補助金の趣旨なので、震災前より豊かになることは認められないのだ。

 

震災前に売上減少の一途であった企業が、被災してすべてが無になったとする。補助金をもらってなんとか新規まき直しを図ろうとする。

 

いやいや、それはいけません。補助金をあげますから震災前の右肩下がりの状況に戻しましょう。こんなばかな話はない。

 

もちろん国は、震災前に傾いていた企業は補助金を出すからもう一回傾けとは言っていない、そんなことは言うはずがない。しかし、そう言っているのと大差はない。

 

確かに「焼け太り」は認められない。それはわかる。しかし、実はこの問題の本質は焼け太りは許されないという問題ではなく、補助金の効果の問題なのだ。グループ補助金に限らず、どんな補助金についてもそうだと思うが、ある補助金についてそれがどのような効果を挙げたのかということについて議論されることはほとんどない。

 

役人の仕事は与えられた予算を使い切ることであって、その効果について考えることはないのだ。補助金は本当に役に立ったのか、それともどぶに捨てたのと同じなのか、などと考えることはないのだ。

 

F社については、その後どうなったか私は確認していないのだが、仮に旧式の生産ラインで復旧したとしよう。そして、やはり旧式のラインではうまくいかず事業閉鎖になったとしよう。

 

これは結局、せっかくの補助金が活きなかった、無駄になってしまったということになるのだが、役人はそんなことは気にかけないのだ。彼らの仕事は、補助金を出してしまえばそれで終了なのだ。彼らにはその後のことを考える余裕はない。

 

私は役人を非難しているのではない。そういう仕組みになっていることが問題だと思っている。



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