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朗報かも(6)「寄生虫感染がCOVID-19の重症化を抑える可能性」

2021/09/13


TONOZUKAです。


寄生虫感染がCOVID-19の重症化を抑える可能性

以下引用

エチオピアMekelle大学のDawit Wolday氏らは、同国のCOVID-19患者を対象に腸管寄生虫の感染状態とCOVID-19の重症化リスクを検討する前向きの観察コホート研究を行い、寄生虫に感染している患者は、そうでない患者よりも重症化するリスクが低かったと報告した。結果は2021年7月31日EClinicalMedicine誌電子版に掲載された。

 アフリカ諸国では、先進国のCOVID-19患者と比較して重症化する割合が有意に低いと報告されている。COVID-19の重症化が少ない理由の少なくとも一部は、寄生虫感染による免疫系の活性化が寄与しているという仮説が考えられているが、寄生虫の存在とCOVID-19重症化リスクについて詳しく調べた研究はなかった。そこで著者らは、寄生虫感染陽性者では、Th2型免疫応答が優位になっているために、COVID-19の重症化を引き起こすTh1型免疫応答の暴走が抑制されるという仮説を検討するためのコホート研究を計画した。

 組み入れ対象は、エチオピア北部のMekelle市と首都のアディスアベバにある2カ所の病院でPCR検査によりSARS-CoV-2感染と診断された患者。同国では診断が確定した患者は、重症度にかかわらず、全員COVID-19隔離治療センターに入院することになっていた。2020年7月~10月にMekelle市で診断された515人と、2021年2月~3月にアディスアベバで診断された236人の患者をコホートに組み入れた。患者のデータとアウトカムは電子診療記録で確認した。

 参加者の新鮮便標本を採取して、直接顕微鏡観察と、Ritche変法を用いた濃縮を行って、寄生虫と寄生虫卵の存在を調べた。また、Kato-Katz法を用いて寄生の程度を定量した。寄生虫が見つかった患者には、それぞれの微生物に応じた治療を行った。イベルメクチンの投与を受けた患者はいなかった。

 主要評価項目は、COVID-19が重症化した患者の割合とした。年齢、性別、居住地、学歴、職業、BMI、併存疾患で調整し、順序ロジスティック回帰モデルを用いて寄生虫感染とCOVID-19の重症度の関係を検討した。COVID-19患者の重症度は、WHOの基準に基づいて、無症状、軽症から中等症、重症、重篤に分類し、重症と重篤に該当する患者を重症COVID-19と見なした。

 コホートに組み入れた751人のうち、63.9%が男性患者だった。年齢の中央値は37歳、四分位範囲は28~50歳、最年少が3歳で最年長は92歳だった。患者は中央値で12日(範囲は3~45日まで)入院していた。診断時点では、無症候性が36.2%、軽症~中等症が29.8%、重症が29.0%、ICUでの治療が必要な重篤患者が4.9%だった。

 751人のうち284人(37.8%)が、少なくとも1種類の腸管寄生虫に感染していた。一般的な原虫に寄生されていた患者が計152人(20.2%)で、蠕虫に寄生されていた患者は計184人(24.5%)だった。原虫の中では、エンテロアメーバ属陽性者が126人(16.8%)、ジアルジア属陽性者が27人(3.6%)いた。蠕虫では、小形条虫(Hymenolepis nana)が113人(15.1%)から、マンソン住血吸虫が34人(4.5%)から、ヒト回虫(Ascaris lumbricoides)が27人(3.6%)から見つかった。複数の寄生虫に感染されていた患者は65人(8.7%)だった。寄生虫感染と性別、年齢の間に有意な関係は見られなかった。

 寄生虫感染がなかった患者467人のうち、重症になったのは196人(42.0%:95%信頼区間37.56-46.52)だった。一方で寄生虫感染陽性だった284人では、重症になったのは22人(7.8%:5.14-11.51)だった。同様に、WHO分類で重篤な状態になったのは、寄生虫感染がなかった467人中32人(6.9%:4.88-9.54)と、寄生虫感染陽性者284人中5人(1.8%:0.73-4.18)だった。

 腸管寄生虫が見つかった患者は、COVID-19が重症化するリスクが低かった。交絡因子を調整したオッズ比は、1種類以上の何らかの寄生虫感染ありで0.35(95%信頼区間0.26-0.48)、原虫感染患者が0.51(0.36-0.73)、蠕虫感染患者0.37(0.27-0.52)、複数の寄生虫が検出された患者0.43(0.26-0.71)にも有意なリスク低下が見られた。

 さらに、寄生虫の種ごとにリスクを検討すると、エントアメーバ属のシストが見つかった患者が0.39(0.26-0.58)、小形条虫(Hymenolepis nana)陽性患者0.49(0.33-0.73)、マンソン住血吸虫陽性患者0.42(0.21-0.86)、鞭虫(Trichuris trichiura)陽性患者0.17(0.04-0.78)で、重症COVID-19リスクは有意に低かった。鉤虫感染陽性者においてもリスクが低い傾向は見られたが、差は有意にならなかった。

 COVID-19により死亡した患者は11人(1.5%)いたが、それらの中に腸管寄生虫陽性者はいなかった。

 これらの結果から著者らは、腸管寄生虫が感染しているCOVID-19患者では、寄生虫がいないCOVID-19患者に比べ、重症化するリスクが有意に低かったと結論している。因果関係は不明だが、寄生虫感染が免疫の過剰反応を抑えてCOVID-19の重症化を抑える作用があるならば、低所得国のCOVID-19死亡率が低い理由に説明がつくとしている。この研究はEuropean and Developing Countries Clinical Trials Partnershipなどの支援を受けている。

 原題は「Effect of co-infection with intestinal parasites on COVID-19 severity: A prospective observational cohort study」、概要はEClinicalMedicine誌のウェブサイトで閲覧できる。






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