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画鋲

「あ、!!!」

次の月の予定をカレンダーに書こうとしてめくったら、カレンダーをとめていた画鋲が外れて、コロコロ何処かへ落ちて転がって行ってしまった。

多分これは、電話台の向こうに落ちちゃったな。

電話台を動かして、あれをどけて、それをそうして・・・は、
いかにも面倒くさい。

いいや、明日郵便局へ行く用事があるから、ついでに画鋲、
コンビニで買ってこよう。
そう思った。

次の日、郵便局の用事を済ませて、コンビニへ寄る。

あれ??
・・・ないな。

このコンビニは、文房具に力を入れていないみたい。
売られていたのは、付箋紙とペンとカッターナイフだけ。

念のため店員さんに聞く。

「あの~、こちら画鋲って置いていらっしゃいませんか?」

「あ、ちょっと見てきますね。」

「・・・すみません。うちは置いていないみたいで。」

「そうですか。ありがとうございました。お手数とらせました。」

この段階で、まだ私には余裕があった。

もう一軒、近くにコンビニがある。
あそこは文房具も結構充実していたはず。

「・・・すみません。うち、画鋲は置いていないみたいで。」

「え?・・・ああ、そうですか。
ありがとうございます。お手数取らせました。」

歩くのがきついので、躊躇ったけれど
スーパー!!
スーパ―だったら、あるだろう。

「・・・ごめんなさいね。画鋲は置いていないみたいです。」

田舎だから?
なぜ??

ふと思い出す。

そう言えば、マッチを探した時も、なかったんだよなあ。

「ライターならあります」

いや、マッチが欲しいんです。

それにしても、みんな画鋲欲しくないんだろうか?
いらないの?
必要ないのだろうか。
画鋲使う私は、「昔の人」なの??
いやいや、だって、画鋲いるよ??
必要だよ。

田舎の事ゆえ、品ぞろえの問題なのかも。
あまり動かないものは、置かないのかもだな。

なんだか釈然としないながら、帰宅してネットでポチる。

「大げさねえ。
結局、ネットで買えたんでしょ?
買えたんだからいいじゃない。」

そうね。
そうよね。
明日には届く画鋲。
・・・そうなんだけど・・・

でもさ。
そういうことじゃないんだよなって言葉を飲み込む。

世の中は便利に溢れていて
でも、私の「欲しいもの」は、ありきたりの物だのに
なぜかすぐに手に入らない。

欲しい瞬間には、手に入らない。

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