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詠い給えと我が云う

ライ麦の
高く茂るその季節
穂先を揺らす緩い風
その背の高さに身を隠し
口付け交わす少年少女
重なり合うその空間は
いったい誰のものなのか

夕空が
世界に落とした金色の
光の布を払うよう
風が生まれ樹が揺れる
じゃれる友に黄昏と
尋ねて始まるかくれんぼ

錆びたナイフは鈍く重く
切られた腕は痛みを覚え
そこから流れる血液が
指の先から落ちたとき
それは私のものなのか

坂の途中
静かに落ちる月光と
それに重なる風の音
触れることが叶わぬならば
何故に此方へ届くのか

星屑を
並べて繋ぎ形をとる
天に現る巨大絵図
誤り落とした星屑が
誰かの願いを聞き流す

深海の
底に冷たく張り付く頬
無音の中にただひとつ
響く鼓動を押し殺す
目頭の窪みに溜まる煌めきは
悲しみ混じりの結晶か

去り行く背中に嘘を吐く
誰がために、我がために
時の浄化を知りつつも
離れる距離と競うよう
続ける嘘は誰がために

頭を抱えて我に問う
機嫌を窺い人に問う
見知らぬ神に問いかける
納得しうるものなどは
天地を返せどみつからぬ

僕の言葉が君の人生に入り込んだなら評価してくれ