もけもけ

将棋の人です。

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最近の記事

【将棋】努力で到達できるのはアマチュア初段まで、という話

はじめに 「将棋は努力でどこまで強くなれるか?」 古今、将棋村の住人はこの手の論議が大好きである。努力と才能、というテーマで議論をさせれば優に数時間を超える激論が交わされるだろう。「史上最強の棋士は誰か?」という問いと並ぶ2大ホットトピックだ。 察するに、この話題が流行る要因は将棋というゲームにおけるプロとアマチュアの実力差の大きさにある。それなりに将棋を嗜む者であれば、プロ棋士が我々アマチュアと比べてどれだけ強く偉大な存在かということを肌で知っている。プロへの道は狭き門

    • 「久保利明の大逆転劇」を思い出せるだろうか?

      20年来の久保ファンだが、はっきり言って思い出せない。 久保先生はいつも粘っている。凄まじく粘っている。 しかし、粘りが実を結ぶ将棋には滅多にお目にかかれない。 A級順位戦で羽生善治や佐藤康光、森内俊之らに苦しめられたイメージが強すぎる。 去年は虎の子の王将位を渡辺明に奪われ、今年はA級から陥落した。 どんな一流棋士も年齢には勝てない。45歳の久保にとって、第一線で活躍できる時間は長くないのではないか。 そんなファンの杞憂を吹き飛ばすように久保は返り咲いた。タイト

      • 「藤井の桂」が跳躍するとき

        あれよあれよと夢中になるうちに、私たちは歴史の目撃者となってしまった。 投了が近づくときの何とも形容しがたい雰囲気。緊張感と高揚感が入り混じるなかで新たな時代が幕を開けた。 7月16日19時11分。 今世紀で最も将棋界が注目を集めた瞬間だろう。 作ったようなシナリオ第91期ヒューリック杯棋聖戦は、三冠王の渡辺明にタイトル戦初登場の藤井聡太が挑戦するという構図になった。 渡辺明は歴史上に5人しか存在しない中学生棋士の一人だ。2004年に森内俊之から竜王を奪取してから常

        • 【観戦記】振り切った天才 第91期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦 永瀬拓矢二冠vs藤井聡太七段

          全国の将棋ファンにとっては気が気でない1週間だっただろう。しかしついにここまで来てしまった。 私たちは伝説の序章を目の当たりにしているのだ。 「軍曹」永瀬が見せた、勝負師の顔 永瀬拓矢と言えば、圧倒的な努力家として知られている。研究に費やす時間は将棋界でも随一と言われており、秒進分歩で結論が変わる現代将棋の最先端を常に開拓している棋士だ。 そんな永瀬は「負けない将棋」の異名のごとく、長期戦を厭わず受けに徹するなど、徹底的に勝負にこだわる勝負師の顔も併せ持っている。 永

        【将棋】努力で到達できるのはアマチュア初段まで、という話

          記録係問題がようやく明るみに出たらしい(?)

          記録係の不足が深刻な問題となっているようだ。発端となったのは加藤桃子女流三段のツイートである。 緊急事態宣言の影響で奨励会員による記録係の業務が停止され、棋士や女流棋士が記録を取っているようだが、それが限界を迎えつつあるという。今後は徐々に通常通りの形態へ戻ることが予想されるが、そもそも論として記録係の負担は本当に「必要」なのか、という問題がある。記録係問題についてざっくりと整理してみようと思う。 1、記録係の仕事は「労働」か「義務」か私自身も奨励会に在籍していたことがあ

          記録係問題がようやく明るみに出たらしい(?)

          【観戦記】AbemaTVトーナメント・谷川浩司九段vs都成竜馬六段

          「長い詰みより短い必至」という言葉がある。 長手数の即詰みを狙って無理に相手玉を追いかけまわすよりも、まず確実に必至で仕留める方法を考えよという格言である。 谷川浩司は違う。 最終盤、谷川の手は迷いなく敵陣に伸びた。 … 「レジェンド」というチーム名に異を唱える者はいないだろう。 棋士が棋士をドラフトで指名するという異色の新企画であるAbemaTVトーナメント。「フィッシャールール」と呼ばれる超早指しの対局は、瞬発力や体力で勝る若手が有利と言われる。 現将棋連盟会長、

          【観戦記】AbemaTVトーナメント・谷川浩司九段vs都成竜馬六段