見出し画像

犯人はおまえだ!

「おい!ワシの麦わら帽子どこやった!」

父が玄関で喚いています。
わたしと母は居間で「でた。」
とゲンナリ顔。

父は整理整頓ができない人です。
ゆえに家族があらゆるものを片付けるざるを得ない日常を強いられます。

ですので、
『自分がどこかに放置したものは家族がどこかにしまい込んでいると思いこむ節があります』
といいますか、
『自分で失くしたくせに人のせいにしていきなり怒りだします』
が正しい表現かもしれません。

この前日にはエアコンの取り付けに業者さんが来られたので、玄関、居間と室外機まわりを
だいぶ片付けたので、ここぞとばかりにお決まりのセリフをぶつけてきました。

しかしながら、父が失くしものを探している場合、十中八九は父自身が通った導線に放置されています。
これまでにも何度も何度もそんなことがあったので、「探してから聞いて」とソフトに注意はしていました。
それなのに目ぼしい場所に無いと自分で探す前から家族を犯人に仕立て怒りだすのです。
「どこへやった!」と。

今回も例のごとく第一声から怒っていたので、
わたしは家族皆の無実を晴らさねば!と
一緒になって探し回りました。
畑の休憩するところ、農耕具置くところ、玄関ももう一度確認。
見当たりませんでした。

すると、
向こうで軽トラックのドアを開ける音がした
直後、父の小さな「あっ。」が聞こえました。
軽トラックには父しか乗りません。

『見つかったな』と察し、
ああ、また要らない時間につきあわされてしまったとうなだれました。

「あった。あった。」
父は発見の報告すらしないこともあるのですが、
今回は一応伝えてきました。
麦わら帽子をヒラヒラさせながらヘラヘラと。

「よかったね。」
とぶっきらぼうに言うしかありませんでした。
なんでヘラヘラしてんねん。ケンカに発展しないようにイライラする気持ちを飲みこむことで精一杯です。

父は普段から感謝と謝罪を一切口にしません。
「探してくれてありがとう。」
「疑ってごめん。」
ひとこと添えてくれたらこんなに嫌な気分にはならないのでしょう。
身内とはいえ、挨拶って必要だと思うんです。
どういう生活を過ごしたらこんな大人ができあがるんでしょう。家族のせいもあるのかな。

少し不安がよぎることもあります。
病気をしたこともある父ですので、
大丈夫なのかな。
ただ忘れっぽいだけだよね?と。

父方はおじいちゃんもおばあちゃんも
長年認知症に苦しみました。
家族も長年疲弊してきました。
お父さんがなるにはまだ早いよ。
というよりは認知症には絶対ならないでね。
あの日々はもう味わいたくないよ。
頼むよ麦わらのお父さん。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?