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胎児に法律上の権利はあるの?

 おなかの中の赤ちゃん(胎児)も、生まれてはいませんが一つの命であり「人」であることに異論はないと思います。

民法ではどう規定しているのか

 ただ、国民の権利や義務を規定した法律である「民法」の第3条にこのような条文があります。
私権の享有は、出生に始まる。
すなわち、出生しなければ法律上の権利が認められないということです。
ただし、民法の1000条を超える数多い条文の中で3つだけ胎児の権利を認めています。

認められているものが3つだけある

損害賠償

①「損害賠償(民法第721条)」
例えば、胎児の父親が他人の不注意による交通事故で亡くなったとします。
この場合には、父親自身が相手方に対して持つ損賠賠償の権利ではなく、その胎児自身が固有の権利として相手方に損害賠償請求権を持つことになります。
生まれてきた後のことを考えると、父親を不注意で奪われた損害は当時胎児であったその子自身の権利として認められるべきだからです。

相続

②「相続(民法第886条)」
 例えば、父・母・長男がいて、父親が死亡した場合の相続人は、母(配偶者)・長男であり、その相続分割合は各2分の1です。(誰が相続人になるのか、については相続編の記事をご参照ください)
 ところが、父・母・長男がおり、母のおなかに胎児がいる状態で父親が亡くなった場合には、胎児に相続権を認めないとなると、胎児はその後生まれてきても相続に関しては長男とはまったく異なる扱いになりますね。同じ父親を持つ兄弟であるにも関わらず、生まれるタイミングの違いによって権利の有無が変わってしまいます。これではあまりに不合理ですよね。
 そこで、相続に関して、胎児は既に生まれているものとみなすことになっています。つまり、上記の例では母(配偶者)2分の1(4分の2)、長男4分の1、胎児4分の1の割合で相続します。仮に、死産だった場合には最初から胎児は存在しなかったこととしますので、
母(配偶者)2分の1、長男2分の1となります。

遺贈

③「遺贈(民法第965条・第886条)」
 ②と同様の事例で、仮に父親がまだ胎児が生まれていない時点で「胎児に自分の財産を相続させる」という内容の遺言を作成した場合には、この遺言は有効か?ということですが、有効に成立します。

まとめ

 このように、民法上の権利は「出生」によって得られるのが基本ですが、上記の3つについては、これを認めないと後に生まれてくる胎児の権利としてはあまりに不都合であるため認められているのです。

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