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いまどきの社長(第11回)

株式会社ディー・ブレインが1996年9月に始めた株式投資型クラウドファンディングの草分けともいえる「インターネットベンチャー投資マート」。1996年9月、その記事が日経新聞のベンチャー欄トップに掲載されると、瞬く間にダイヤモンド、東洋経済、日経ビジネスなどの主要経済誌が遍く記事にし、大きな話題となってしまったのです。11月には大蔵省に呼ばれ、証券会社の新設を勧められるという、前代未聞の事態の渦中に置かれた私ですが、とにかく言われたとおり新設証券会社の事業計画をつくることとしました。計画に表現したのは、未公開株式の募集取扱と売買仲介のみを行う、これも前代未聞のユニークな証券会社の事業です。

12月も半ばを過ぎ、クリスマスまであと数日というタイミングで大蔵省のN課長補佐を改めて訪問。つくった事業計画を示すと、
「わかりました。では進めましょう。」とにこやかに言います。
「えっ?」と聞き返すまもなく、「まず日本証券業協会に行って相談してきてくれますか?」とNさん。
私が怪訝そうな顔をしていると、
「日本証券業協会というのは、全ての証券会社が加入している業界団体です。そこでいろいろ聞いてきてください。」

年も押し迫っていることから、来年にしようかとも思いましたが、善は急げ。その日のうちに日本証券業協会に電話を入れてみました。
すでに連絡が行っていたのか、12月26日にお待ちしているということです。

日本証券業協会を訪ねると、ずいぶんと横に長いテーブルの置かれている部屋に通され、そのテーブルの真ん中に座らされました。
それもそのはず。しばらく待つと、ぞろぞろと8名もの人が出てきて、8対1で質問攻めです。
インターネットベンチャー投資マートはどういう仕組みか、ディー・ブレインはどんな業務を担っているのか、証券会社をつくったらどのように証券業務をやるのか、その組織は・・・・などなど。
30分ほどやり取りが続き、その最後に、左端に座っていたH課長が歯切れのよい語り口でこう言うのです。
「お話を聞いて安心しました。危うく証券取引法違反で告発しようと思っていたところでした。」
そして、一息置いて、
「このたび、証券会社を新設いただくとのこと。当協会は証券会社の会員の会費収入で運営されているので、収入も増えます。歓迎しますよ!」
とおどけた笑顔で、私の緊張も一気に解けました。
早速、来年早々より証券免許の申請手続きを始めることをお約束。
銀行の子会社以外の純粋な民間の証券会社の新設は、なんと30年ぶりとのこと。
新たな年、1997年がどんな年になるか、期待と興奮で胸の鼓動が高鳴るのを感じつつ、私は年の瀬の霞が関を後にしました。(つづく)

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