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異様な美しさを放つ衣通姫

沼田まほかるさんの九月が永遠に続けばを読みました
この本,私の中学生時代の愛読書です
何度も何度も読み,ミステリーの答えは今でも覚えています
しかし,なぜ私はこの本をそう何度も読み返したのか
ふと,気になったので10年越しの再読です

衣通姫

衣通姫(そとおりひめ)
その美しさが衣から外に輝きを放つことから名前がついています

作中に出てくる二人の親子,亜沙実・冬子
異様な美しさで男性を狂わせ,その狂気によって自らが傷つけられ,精神に異常をきたしてしまった亜沙実
そしてその美しさを引き継ぐ,冬子
まさにこの二人は衣通姫です

物語は,亜沙実の旦那とその元奥さん佐知子の息子である文彦の失踪を中心に描かれる
ここだけ見てもとても複雑な人間関係です

そんな複雑な人間関係の中で起こる事件
結論だけ言ってしまうと,全て二人の衣通姫が原因という訳です

もちろんミステリーとしてもとても面白かったです
全ての元凶は本当に思わぬ人でした
しかし,ミステリーの答えを知ってしまった後で,話の面白さだけで何度も読んでいたわけではないのです

何度も読んでしまう狂気的な美しさ

私がこの本を何度も読んでいた理由
それは,二人の衣通姫の表現なんだと思います
読むと,私までその美しさの狂気に触れているような気がしてきます
2人とも目鼻立ちがはっきりしているわけではなく,体は細すぎるくらいなのに,異常に白い肌と黒い髪
二人を表現する言葉一つ一つが絡み合い,常軌を逸した美しさを生み出しているのだと思います

私はこのような人を狂わせる美しさに魅了されこの本を何度も何度も読んでいたのだと思います

過剰なダイエットなどルッキズムがより顕著に現れている現代
しかし,この小説内に出てくる美しさはそのような後からの努力で身につけられるものではないと思います
逆に,取り払おうと思っても発光するように美しさが滲み出てしまって隠すことが出来ないのだと思います


美しさにより災いが起こり,自らの破滅を招いてしまった二人の衣通姫
そのような結末を見てもなお,惹きつけられ,その狂気を感じたくなってしまうのはなぜなのでしょうか


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