どしゃぶり☆プリン(11)「日本国」

 さっそく弄っていくわけだが、前提を示し、数パターン書いていくのが、通常の構成。今回は弄り方を指定して、それに関して書いていく。
「西暦2123年」「人口12億4946万7890人」
つまり、22世紀、人口10倍ということ。さぁ行こう。

「土地が足りなすぎる」
 空き地という空き地に、巨大なタワーマンションを乱立させても足りず、空中都市もつくる。地下都市もつくる。それでも足りず、宇宙エレベーターを各都道府県につくり、宇宙コロニーも建設。ブレードランナーよろしく、サイバーパンクな世界は結構だが、風情なんてあったもんじゃない。

「12億5000万人なんて、養えない」
 この人数を賄いきれる経済規模なんて、存在しない。トヨタと同格の会社をあと9社なんて、正気じゃない。世界でも支配しない限り、人口の半数以上が貧困層。富裕層は上位0.7%程度、中間層は40%、底辺層が60%弱。教育が行き届かない層が分厚く存在し、治安は悪化するだろう。
 政府が把握しきれない人間も相当数おり、人身売買などの深刻な人権侵害も横行しそうな気配。多ければ良いという問題ではない。

「底辺層に生まれたら、這い上がれない」
 人口が多すぎるので、都市部は特に物価が高く、仕事にも就けない。教育レベルも低いので、高度な仕事につくことはできない。単純作業や、肉体労働はほとんどロボット・AI化されているので、犯罪を犯してでも生きるしかない。また、階級社会化も免れないので、酷い差別もある。基礎教育もままならない人間が、這い上がる手段はない。

「人間では管理しきれない」
 人口が多すぎるので、国民ひとりひとりにナノマシンの注射が義務付けられている。AIが送られてくるデータを捌き、管理する。実質上、個人のプライバシーは存在しない。しかし、一部の人間はその束縛から逃れるため、ナノマシンの摘出や、注射逃れを始める。その場合、あらゆる行政サービスをはじめ、民間のサービスも受けられないため、一般社会で生活できない。
 やはり、管理外の人間の社会が一部形成され、治安の悪化が止まらない。

 「過ぎたるは猶及ばざるが如し」という言葉がある通り、何事も適量が存在する。インドの人口は約14億人。本当の意味での読み書きができるのは、約5割程度と言われている。経済大国になることは間違いないが、解決できない問題、深刻化し手の施しようのない問題、見捨てられる底辺層といったことを抱えながら進んでいくだろう。
 日本においては、人口が減ったら減ったなりに、国家として、どう生き残っていくか考えたほうがいい。と思っている。人間も国家も現実をみて、建設的・現実的な方向に進むほうが、希望が湧く。
 一方で、巨大なタワーマンションが乱立し、宇宙エレベーターが空を突っ切り、人で、異文化で、あらゆる階層が入り乱れるカオス。そんな世界に一瞬だけ住んでみたい。雨が大きな窓にしたたり、車が空を飛び、緊張感をもちながら真夜中に出かける。珍しく人間の老婆が運営する商店で、手作りの豚の角煮と、安いビールを買って帰りたい。住めば都。人間は適応能力が高い。問題は、底辺にも慣れて、向上心を持たなくなること。 
 蛇足を断ち切って、今日はここまで。明日はショートショートである。

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