ただではころばぬ

 休日出勤。
 と、いっても軽作業と点検があるだけの、かたちだけの、零細の決まりごと。あっさり、だが、確かな責任感をもって終わらす。汗による不快指数は許容の範囲。
 職場へ向かういつもの歩道。コンビニの横にトラック。入荷作業をしている男性に気づかなかったのか、スポーティースタイルの妙齢の男女が急停止した。衝突とはいかないまでも、不用意である。前をむいて走っていたはずだが、どういうつもりですか。
 もしかして、男性が物理法則を無視して車道側にスライドするとでもおもったのですか。衝突未遂という不作為、不作法は、そのスタイリッシュさを完全に消し去った。消したのはお前らです。
 駆逐されればいいのに。
 そう、失笑しながら休日出勤に挑んだ。
 そして、時間がない。今日に限って。
 本日鑑賞する、
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』
 の予約した上映時間は、12時25分から。総武線に乗り込んだのは10時40分。発券の締切は30分前の11時55分。新宿に到着したのは11時10分ごろ。
新宿バルト9へ直行し、発券し、パンフレットを購入。早足でいつもの、いきつけの『沖縄料理やんばる』へむかう。
 そして惰性で「ラフティー丼セット」を注文。これが優秀過ぎて、毎回これ。で、惰性と。ラフティーに唐辛子とコ―グレース(唐辛子を泡盛につけこんだ調味料)をかける。沖縄ソバには紅生姜。
 ラフティー丼は、いとこんぶ。これが良い仕事をしている。素朴な旨味を加えてくれる。
 急いで紀伊國屋書店に向かうが、希望していた「大坪砂男」の書籍はなく、やむなく、上映時間も迫っていたので新宿バルト9に戻る。
 糞をして、
 ションベンして、映画館に対する課金であるペプシのLサイズを購入し、また、ションベン。念入りに。
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 後章』
 上映開始、
 上映終了。
 感想。ライトなSF、女子の友情、大学生の青春、世界の終わりを阻止せよ、侵略者の宇宙人保護派と、殲滅を所望する過激派。
 これはスキだよ。サブカル好きなら好きですよ。変にラブシーンがないのは、さり気にポイント高し。あのさんも、幾田りらさんも、声優の才能ありますな。役柄にぴったしです。しっくりです。歌もいいスね。
 もともと炭酸が弱いペプシが後半になるに従い、ただ甘い汁となる。それはそれで映画館の味である。風情でございます。受け入れよ、と、いうこと。飲み干してヘヴンですと。
 終われば新宿バルト9に用はないので、紀伊國屋書店・新宿本店に向かう。大坪砂男の書籍がない今、本日の作戦は、野生の勘に頼る。
 なんて斜に構えたが、その実、前から欲しかった書籍しか買わなかった。金を無駄にしたくない。
 冒険しよう。そう思って冒険できた試しがない人類に生まれついた私が、無作為に、金をミス、またはミセス・レジの人に渡せない。金の問題より、野生の勘に依拠した判断で、博打の結果で、私の書架(大袈裟な表現)に新入りを加えたくはない。どうせ読まない。
 その結果、前述したとおりになった。内容については明後日の『週刊・我がヂレンマ』で紹介するとして、
「明日は積読を消化しよう。三島由紀夫の豊饒の海・四部作に手をつける」
 と、宣言する。結果については明日のnoteで。
 閑話休題。
 紀伊國屋書店をあとにし脱兎で新宿駅、総武線にゆられゆらゆら帝国。
 足だすザ・ブス。若いブス。頑張れブス。いや、そんなにブスではない。私の好みでないだけで、世の中にはモノ好きがいる。
 何様かと思うこと縄の如し。死角からとなりに座った女。それにふざけて座ろうとする彼氏。二人とも顔は見えていない。
 羨ましい。そう思ったのも束の間、向かいの席の角が空いたので移動。
 二人とも、私より年上だった(私、38ちゃい)。
 仲良くやってくれ。
 好きにしてくれ。
 そんな不躾で身勝手な感想をめぐらせていたら、地元の駅に到着した。
「ワンパターン。いや、ルーチン化」
 新宿へ行くと大体、こんな感じ。もう少しバリエーションを出したいが、現実的には、根が物臭で保守的にできている私は行動を変えはしない。
 新宿御苑には、いつか行ってみたいが、行ったとして、幾分か緑を感じてすぐに新宿三丁目に戻るだろう。都会にオアシスを求めるほど飢えてはいないのだ。
 そんなことを考えながら、今晩の酒盛りのアテを(卵とザーサイと鶏肉)を買い込んで、バスにライドオン。そして気になることが。
 4、5歳の女児がベビーカーに乗っていた。
 まだ乗せてんのか。乳幼児じゃあるまいし。と、思ったが、荷物をくくりつけたりしていたので、主に荷物用なのかもしれない。そう納得した。
 家につくと、Yー3のスニーカー『FTW S-97 Ⅱ』をジェイソンマークというスニーカー用ソープで洗う。
 そして、
 自室で転倒した。洗い終えたスニーカーを避けるために。ズルっと。
 幸い怪我はなかった。
「ただではころばぬ」
 が、ただ転倒しただけ。面白エピソードではない。
 つまり、
「ただころんだだけ」
 げんなりしんなりした、題名の回収。洒落た題名にしたかった。ほんの出来心が事件を呼び寄せる。事件の影には涙がある。泣いてなどいない。
 もういい。酒を呑む。しこたま目玉焼き(ひよこの命、十匹ぶん)をつくってクラフトビールを呑んでやる。
「perfumeのかしゆか、土曜スペシャルに出てる。髪がながいなぁ」
 そう独り言ちて、世は更けていく。男ひとりおひとり。了。

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