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「おとり広告」「おとり物件」ってなに?#2 ~不動産のおとり広告~

■はじめに

今回は、「おとり物件」編のパート2です。

前回の記事では、大手回転寿司チェーンでの景表法違反の事例から見る「おとり広告」についてご紹介しました。

今回の記事では、不動産業界の「おとり物件」について、詳しく書いてまいります✒

■"不動産業界のおとり広告"とは

不動産業界においての「おとり広告」とは「おとり物件」と同義として語られる事が多いものです。

まず、景品表示法第5条第3号の規定に基づく告示である「不動産のおとり広告に関する表示」では、”おとり物件”について以下のように定義されています。

自己の供給する不動産の取引に顧客を誘引する手段として行う次のような表示を不当表示として規定しています。
(1)取引の申出に係る不動産が存在しないため、実際には取引することができない不動産についての表示(例...実在しない住所・地番を掲載した物件)
(2)取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引の対象となり得ない不動産についての表示(例…売約済みの物件)
(3)取引の申出に係る不動産は存在するが、実際には取引する意思がない不動産についての表示(例…希望者に他の物件を勧めるなど当該物件の取引に応じない場合)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/case_003/

消費者庁「HP不動産のおとり広告に関する表示」

要約すると以下の通りです。

おとり物件とは、下記を広告掲載して集客をする事
・存在しない物件
・存在するが取引できない物件
・存在するが取引する意思のない物件

「存在しない物件」とは、実在していない架空の物件のことであり、「存在するが取引ができない(取引する意思がない)物件」とは、既に入居者が決まり募集が終了した物件のことです。

消費者は、お部屋探しをする場合、「募集中!」として広告を見たら、当然募集中で紹介してもらえるもの、と考えるでしょう。

ただし、おとり物件は人が入居する事ができませんので、不動産会社から「その物件は申込が入ってしまった」といった説明をされ、他の物件を紹介されることになります。

これまでにお引っ越しをした事がある方の中には、「もしかしてあの時のアレは”おとり物件”だったのかも・・・!」と思い当たるご経験があるかもしれません。

「おとり物件」についても、前回前々回の記事同様、景品表示法違反にあたり、発覚した場合、課徴金や主要ポータルサイトへの広告掲載が一定期間停止になるなど厳しい措置命令が下る場合もございます。

山Pこと山下 智久さん主演ドラマ化されたことで話題になった漫画「正直不動産」の中でも、不動産会社に勤務する主人公・永瀬財地が「千の言葉の中に真実は3つだけ」と言い放つ有名なシーンがあるように、集客の為に好条件な架空の物件を広告する不動産会社が存在していたようです。

現在はそのような物件広告を行う不動産会社自体が少ないため、LIFULL HOME’Sに掲載されている物件で、ありもしない架空の物件が掲載されている可能性は極めて低いです。

ところが、残念ながら現在の不動産業界においても”おとり物件”自体は存在しています。

■不動産業界の「おとり物件」、最大の要因は・・・? 

現在の不動産業界における「おとり物件」は、意図的に不当な客引きを行う為の広告ではなく、「広告の取り下げ漏れ」を要因とする「意図的ではないおとり物件」がほとんどを占めています。

「意図的ではないおとり物件」とはどのように発生するのでしょうか。

次は不動産広告掲載の仕組みを見てみましょう。

■仲介会社と管理会社~リアルタイムでの情報取得の難しさ

賃貸物件に関わる不動産会社は、大きく「仲介会社」と「管理会社」の2つに分かれています。

2つの会社の役割は大まかには次の通りです。

・管理会社:物件自体の管理業務を行う会社

・仲介会社:管理会社や大家から依頼されて物件を紹介する会社

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物件の最新の空き室情報を把握しているのは「管理会社」です。「仲介会社」は空室となっている部屋を広告し、入居希望者を仲介する事が主な業務ですので、広告している物件に「家賃などの変更がないか?」、人気物件であれば「既に申込が入っていないか?」等を、都度管理会社に確認を取ります。

また、仲介会社は多いところで数千件の物件を取り扱って広告を行いますので、常に最新状態にしておく為には、多大な労力と人員が必要となります。

特に3月・9月のように入退去が激しい転居シーズンは、本業である物件案内や入居の契約処理を行いながら、毎日のように埋まっていく物件の情報を追い続けなくてはならず、結果として広告を非掲載にするまでに時間を要したり、場合によっては非掲載にする作業自体を漏らしてしまったり、が発生します。

こういった広告が「意図的ではないおとり物件」が発生する背景です。


今回は、不動産業界の”おとり物件”についてお話しました。

「おとり物件」は、不動産業界ならびに不動産ポータルサイトでの長年にわたる課題であり、必ずしも悪意を持って集客する目的ではないのですが、
だからといって「おとり物件」がある事によって、お部屋探しを行う方々に余計な手間や時間をかけてしまう事に変わりありません。

■今日のまとめ

おとり物件は「存在しない物件」「存在するが取引できない物件」「存在するが取引する意思のない物件」を広告掲載して集客をする不当表示 

おとり物件の主な要因は、仲介会社が募集状況をリアルタイムで取得、把握できないこと

次回は「おとり物件」が消費者に与える影響について詳しく書いていきたいと思います。

お楽しみに!
次回記事はコチラ!

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